【Rockman.EXE@】
雪の様だと言ったのは貴方
「それにしても、雪みたいだよな」
外はそろそろ春の息吹に想いを馳せても良い時期。
冬の気配が次第に遠退く、ゆったりとした休日。
天気も良いが、今日はアツキと家で過ごす事にしたヒノケンが…アツキを見ながらの一言。
窓際で陽光を受けていたアツキは、何を季節に逆行した事を言い出すのかと顔を向ける。
「お前の猫耳と尻尾の事だよ」
「……ああ」
"みたいだ"、と言ったのだから雪そのものではない。
ヒノケンが対象としたのはアツキの猫耳と尻尾。
出会った時から―――白さは保たれており、確かに何かを連想するなら雪も相応しい真白。
「…あンまり雪って言われンの、好かね」
「何でだよ、イイじゃねぇの」
リビングで各々、勝手に過ごしていたが。
暇を持て余してきたのか、アツキを眺めていたヒノケンの一言で室内の空気が動き出す。
ソファからヒノケンは立ち上がると、アツキの傍に。
「オラのアツいハートと真逆で冷てぇでねぇか」
「雪だと思うのは、お前のその訛り具合から連想しちまうってのもあると思うんだがな」
「うぐ…そら、こっちに貰われて来る前は、雪がよう降る地域サ住んどったけンども…」
「まあ色の印象だけで、実際に冷たい訳じゃねぇが」
…フカフカ…
「寧ろ温いな」
「きっ、気安く触るでねぇ!」
傍に寄り座ったヒノケンから突然、猫耳を撫でられ。
アツキは怒る様子を見せるけれども、そこまでココロから嫌だという訳ではなさそうで。
ドキドキしてしまっている照れ隠しに違いない。
振り払おうともせず、既に好きに触らせている。
「コッチにはピアスホールを開けるとか言うんじゃねぇぞ、綺麗なんだから必要無ぇ」
「わ、分かっただ…」
くしゃりと。
優しくだが念を押す様にヒノケンは猫耳を掌に収め握り、フカフカと感触を愉しみ愛で。
キレイと言われたアツキは、どぎまぎした想いに喜びを織り混ぜた表情を浮かべさせた。
「ん〜…雪みてぇだってのがイヤだっつうなら…お前は甘いのが好きだし、白くてフカフカしてっから…綿菓子とか言えば良いかよ」
「…そもそも例えンでイイけンと…そら雪よりは…」
「どれ、味見してみるか」
「は…?」
はみ…フカ…
(はああぁぁああー?!?!)
ヒノケンの指や掌が猫耳に触れるだけでも、アツキには甘いくすぐったさに包まれるのに。
口唇で柔に食まれるのは反則。
「なっ、何スとるだオッサン!」
「綿菓子なら甘いだろ、お前は甘いのばっか食いたがるからココまで甘くなってそうだ」
「ン、ンな訳ねぇべ!」
「ふーん…じゃあ尻尾はどうだろうな?」
スリ…シュッ…シュ…
アツキの尻尾は猫耳と同じ真っ白。
口唇を猫耳に寄せたまま、ヒノケンは無防備な尻尾に手を伸ばして捕らえ掴むと軽く扱く。
「〜〜〜…っ!…わ、分かっただオッサン!綿菓子は無し!オラの耳は雪みてでイイだ!」
「何だよイヤなんじゃねぇの」
「イヤでねぇ!ンだから…!」
「まあ雪だろうが綿菓子だろうが…ぶっちゃけンな事、俺はどうだってイイんだけどな」
「はっ、はあっ?!」
雪だ何だと言い出した本人が投げ出す発言に。
アツキはヒノケンへ睨みを込めた眼差しを向けるも。
ヒノケンは涼しい顔で受け止め、そんなアツキの態度が折り込み済みである事を窺わせる。
何て、愉しそうな表情を見せるのか。
「あんなのは飼い猫とスキンシップしてやる口実に決まってるじゃねぇか。お前を可愛がらせろよ、つうか俺に構いやがれ」
「…なんちゅうオッサンなンだか…オッサンの方が、ベッタベタ甘えたの綿菓子でねぇか」
「おっ、上手いな」
「上手いとかでねぇっちゅうに!」
何を返したところで、この飼い主は止まらない。
口唇と指先が触れる猫耳と尻尾がとても熱く、雪や綿菓子なら溶け落ちているに違いない。
もし、溶けて無くなってしまったら―――猫から。
(ニンゲンになッツまっても、知らねっかンな!)
■END■
◆3月3日を雛祭りだと思うと、電脳甘酒を飲んで酔っぱらっているEXE4.5のファイアを真っ先に思い出してしまうんですけど。酒弱いのかよ可愛い…(笑)
他には耳の日でもあるという事で。
本来の制定の意味合いとは異なりますが、始めたてのアツキにゃんのお話をもうちょっと増やしたいな!というのに便乗して猫耳愛で話を(*´∀`*)
犬耳の時は、えっちなお話な事が前提だったので…健全(?)にスキンシップを取っているケモ耳尻尾なヒノアツって何だか新鮮な気持ちです。
いや勿論、えっちなお話もいずれは(…)
2021.03.03 了