【Rockman.EXE@】
星みるあたたかな夜
◆診断メーカー様の結果から
ほのぼのあったかヒノアツにゃん



朝、ヒノケンが見ていたテレビの天気予告でマスコットキャラクターがこんな事を言った。

『夜は今期の流星群が見れるピークなのら!』

夜空の大イベント!等とも伝えている、その番組を。
ヒノケンと共に朝食を食べていたアツキは、マスコットキャラクターが切り替え映す星の煌めく様々な写真を…食べる手を止め、じいっと見詰めて。
一言、ぽつり。

「一緒に、流れ星を見てぇだ」

―――…

迎えたその夜は、普段よりも静かに感じられた。
周囲の家も今宵の流星群を心待ちにしているのだろうか、照明も落とされている様に思え。
ヒノケンの家も同じく、殆どの灯りが消されており。
庭に面した窓辺にはアツキが座る姿。
ひっそりと流れ星を待ち、窓の外に目を。
雪の様に白い猫耳と尻尾は、暗い中でも映えている。

「思ったより冷えるな、暖房要るか?」
「…オラは暖房までは必要無ぇべ」
「"までは"、ってか。なら毛布でも持って来るぜ」

家の中の電気を一通り最低限の明るさに落として、アツキの居るリビングに戻るヒノケン。
暖色の失せた室内はどことなく冷えた空気。
アツキに暖房を点けるかを問うと、そこまでの必要性は無いものの冷え自体は感じ取っているらしい返事を受けて、毛布を取りに再びリビングを離れ。
夜空に目を向け続けてアツキはヒノケンを待つ。

「(…流れ星とか、何でオラ見てって言ったンだべ)」

特別、アツキは星が好きだという訳ではない。
どちらかといえば普段は気にも留めていない方だ。
けれども何故か、今夜の流星群は見てみたいと思い。
そしてそれは―――誰か、と。

「ホラよ、毛布持ってきたぜ。置いとくな」
「ン…」

物音を極力、立てずにヒノケンが戻る。
手にする毛布を大人しく佇む猫の隣に置き。
窓の外の夜空を窺う。

「まだ流れ始めてはいねぇのか」
「…あの天気情報のキャラクターが言っとった開始予想の時刻には、も少ス時間が有るだ」
「そんじゃ、何か温かい飲み物も持ってくるか。飲みたいリクエストはあるかよ小僧」
「……ココア」
「ココアだな、待ってろ」

今一度アツキの希望を叶えるべく、リビングを去るヒノケンの気配を背中に受けるアツキ。
咄嗟に口をついて出た希望だったのだけれど。
多分、きっと、ココアが飲みたい気分だった筈。

「……」

星はまだ、あと少しだけ流れるまでに時間がある。
窓の外から目を離して、ヒノケンが持ってきて傍に置いてくれた毛布に手を伸ばし、広げ羽織っておこうとしたところで。
その毛布は1枚だけである事に気が付いた。

「(オラの分だけ…?)」

思ったよりも冷えると言い出したのはヒノケンだ。
ならば、これから暫く一緒に流れ星を見てくれるならヒノケンの分の毛布も有るのが自然。

「(…オッサンは、そンな見たい訳では…ねっか)」

ココアに付き合うまでの気乗りだろう。
自分の今までの興味具合を思えば、ヒノケンがその程度の興味具合でも何となく分かる。
少し、悲しいけれど。
短い時間でも自分に付き合ってくれるなら。

……カチャ…

「そら、ココアな」
「あ…う、うン…そンの、オッサン…」
「あん?どうかしたか?」
「…流れ星とか…オッサンには興味が無くて、仕方がなくオラに付き合っとるンなら…ココアば飲ンだら先に寝てても構わねっかンな。後片付けは…スっから」

トレイに乗せられた2つのカップ。
アツキ用に購入したカップは、まだ新しい。
両のカップからは湯気が立ち上ぼり、これからの時間を温かに過ごせそうなホットココア。
そんなカップが乗ったトレイをアツキの前に置き、ヒノケンも流星群を見る準備を整えようとし始めたところで、アツキの口から後ろ向きな言葉が紡がれ。
更には尻尾をシュンと寂しげに下げ。
ふ、と。
ヒノケンは短く呆れ気味に息を吐く。

「ンだよ、俺と一緒に見てぇんだろ?」
「…そだけンと、オッサンが気乗りせンなら…」
「大体、何でそう思うってんだ」
「毛布…1枚スかねっから…羽織って長い時間は見る気が無ぇンでねぇかって、思っただ」
「……成る程な」

拗ねを含んだアツキの言葉の理由。
それを聞いたヒノケンは納得の様子を見せ。
という事は、合っているという―――

「誤解させたって訳だ」
「…誤解?」
「コイツはウチで一番大きいダブルサイズの毛布だから、1枚ありゃ充分なんだよ。そら」
「…っ…オッサ、ン…」

アツキは毛布が1枚だと気付いたところで手を止めていた為、まだ広げてはいなかった。
畳まれたままの毛布をヒノケンは手に取り、ふわりと広げられた毛布は確かに大きなモノ。
どういう事か、キョトンとしているアツキの隣。
毛布を羽織りながら座ったヒノケンは、アツキにも広げたその毛布を羽織らせて包まれば。
お互いの体温が、毛布の中でじんわり広がり。

「コ、ココア…貰うだ」

ひとつの毛布の中に二人で包まる密着に。
思いがけない接近でアツキは照れ、しかしそれをヒノケンに悟られまいとココアに逃げる。
カップから上る湯気は表情を隠してくれるから。

ふー…ふー…っ…

「…へっへっ」
「なっ、何がおかスぃべなオッサン」
「生意気な子猫ちゃんでも、猫舌で飲み物を冷ます"しぐさ"はカワイイもんだと思ってな」
「す、すっぐ猫舌猫舌ぬかスけンと、こげな熱いの猫でねくたっていきなり飲めねぇだ!」
「まあ確かに、そうなんだけどよ」

口角を上げて愉快そうに笑まれ。
少々ムキになった顔をヒノケンに向けるアツキ。

「おーおー、カワイイなぁ」
「ぬっ、ぬぐぐ…ふ、ふンっ!」

だが完全に逆効果で追い討ちを掛けられてしまい。
ぷい、と急ぎ顔を背けるとココアを一口含む。

コクン…

「(…あったけぇ)」

身体の内に広がるココアの温かさ。
それに、それに―――隣から感じる体温が、とても。

「……おっ…始まったんじゃねぇか」
「え…う、うわ…」

瞬きが、ひとつ落ちた。
そう思った次の瞬間から、ひとつ、またひとつと。
夜空は幾つもの流れ星の煌めきが主役に。

「今夜が流星群のピークとか言ってただけの事はあるな、なかなかスゲエ規模じゃねぇの」
「…ンだな」

まだココアが残るカップをトレイに置き。
アツキは窓の外に広がる夜空のショーに釘付け。
どうして見たいと言ったのか自分自身で分からないままのアツキだけれど、今この世界を見る事が出来て、ココロから良かったと感じている。
儚いけれど、ずっとずっと残るに違いない世界。

「それにしても、流れ星が見たいとか言うなんてよ。…何か、願い事でもあんのか?小僧」
「願い…事?」

アツキと同じく星々が輝き流れるを見上げていたヒノケンだったのだが、ふと…根本的な。
「見たいと思った理由」は、願う思いではないか。
そう予想を立ててアツキに問うも、反応が鈍い。
そもそも、何の話か知らないといった様子。

「…違うっつうか、知らねぇって感じだな」
「…オラには分かンね事だス、見たいと思った事も…オラ自身で、正直よく分からねぇだ」
「……そうかよ」

訪れる静寂。
流れ星を見ていれば、それで良いのだろうけれど。
ヒノケンの問い掛けに答える事が出来ない自分自身に、何となく居心地を悪くするキモチが浮かび、アツキは自分の分の毛布を羽織り包み直して。
ちょっとだけ身を縮めた。

「…人間の間ではな、流れ星が光っている間に願い事を唱える事が出来たら、その願いが叶う。…なんて言い伝えみてぇのがあったりする訳だ」
「…光っとる間とかスグでねぇか」
「まったくだ、それも3回唱えろとか無茶な話だぜ」

ひとつの瞬きだけを見るなら一瞬の光。
僅かな時間で、願いを唱えるのは容易ではない筈だ。

「だけどソイツを何処かで聞き齧って覚えていて、流れ星ってぇと自然と思い出すんだよ」
「…ふぅン」

もしかすると、自分もそうなのかもしれない。
何処かで人間が話していた流れ星と願い事の言い伝えを聞き齧ったけれど、その時は興味が無くて―――けれど、ココロの隅っこに置かれていて。
流星群のニュースで記憶が呼び起こされ、流れ星を見たい思いに繋がったのではないか。
そう考えてみると、アツキのココロはストンと。
納得したように落ち着いた。

「(そげな無茶な願い方なら…願い事も、無茶な事を唱えてみたってイインでねぇかな)」


例えば。

ニンゲンになって。

誰かさんの傍に居たい、とか。


「(……3回とか全然、間に合わねぇだ)」

解っていた事だから落胆なんかしない。
無茶を試してみたかっただけ、なのだから。
今だって充分、「願い事」は叶えられているのだから。

「…オッサン」
「何だ?」
「……流れ星って、綺麗だなや」
「…そうだな」

他に何かを言おうとしていた気もするけれど。
きっと、これでいいのだ。
瞬くひとつひとつ、本当に綺麗。
だけれど、ただもう少しだけ温かさを感じたくて。
アツキは何も言わずに、ヒノケンに寄り掛かる。

「……へっ」

流れる星に目を向けたまま。
ヒノケンは、自分に身体を預けるアツキの肩にそっと腕を回して優しく抱き寄せてやると。
ちいさくちいさく、猫は「にゃあ」と鳴いた。
星みる、とてもあたたかな夜。

■END■

ヒノアツの場合:窓辺で毛布にくるまってふたりで流れ星が来るのを待って、「ああ、大好きだな」と実感しました。
#ほのぼのなふたり #shindanmaker
https://shindanmaker.com/715149

◆折角、猫の日に合わせてアツキにゃんを開始が出来たので、もう1本どうにかセーフ。
ほのぼの系の結果は今までだとアツキちゃん♀で書く感じでしたが、素敵な結果なのに何となくイメージが浮かばないというのはありまして。
でもこれからは、アツキにゃんならこの結果も書けそうだ、という選択肢が増えたかと。
ふと後書きを書いてて思い出しただけの話ですが、バトルチップに「リュウセイグン」がありましたね。それも炎属性のチップじゃないですか。
かなりガスガス勢い良く落ちてくるから、願い事だとかナントカみたいなロマンチックな事が連想し難い演出なので、此処を書くまで思い出せなかった(笑)
結構、好きでウイルス戦では使っていたなー。

2021.02.22 了
clap!

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