【Rockman.EXE@】
放課後の恋人/教卓【RE】
この男は、とにかく最悪だと。
常々アツキは、そう思っている。

鴉の鳴き声が響き、夕闇に紛れ掛けている校舎。
授業も部活の時間も終わりを迎えて人の気配が無くなった教室内は、既に消灯されて暗く。
廊下の照明から射し込む光によって微かに照らされているのみで、普通に考えるならば誰かが居るようには思えず、一見すると静寂に包まれているが。
よくよくと耳を澄ませば聞こえる熱い息遣い。
それに、粘性を孕んだ水音が一角から溢れていた。

じゅぷっ、じゅぶ…ぐちゅ…っ…!

「ッ、ふ…ンあっ、アッ…! こ、こンのエロ教師…ッ! どっこで、スてるンだ…べッ…!」
「そりゃあ、俺もこんなの予定外だけどよ」

ヒノケン曰く「こんなの」とは。
まず二人が教室内の何処に居るのかという話。
何故そんな事になっているのか、教壇の中心に備え付けられた教卓の中に二人は身体を押し込めていて、更には情事の真っ最中といった具合。

「大体…にスて、教室でスる事自体が、アッ…間違っとるとか、思わねンかオッサンは!」
「何言ってやがる、一回はヤってみてぇだろ」

じゅぶ、ぐぷっ…ぐちゅっ…

「あンっ…く、ふぅッ…ぅあッ…!」
「…それにしても教頭のヤツ、わざわざ見回りするんじゃねぇっつうの。この学園の教室には監視カメラがあんだから、それ見るだけでイイだろうが」

二人の時間を少しばかり巻き戻すと。
ヒノケンの思い付きで今日の放課後の情事は教室で交わす事となり、アツキにブラックボードへ手を付かせて後ろからガツガツ突く立ちバックに及んでいたが。
不意に教頭による校内見回りの足音が近付く。
即座に察知したヒノケンは、アツキの身体を引き寄せて背面にあった教卓の中へ潜り込み、まだ理解が及んでいなかったアツキの口を手で押さえ。
口を押さえられた事で大体の状況が伝わったのか、ヒノケンに協力してアツキも黙り大人しくしていると、自分達の居る教室のドア前で止まる足音。
ドアに備え付けられている窓から覗いているであろうに息を殺して耐え、幸い教室内へと入って来る事は無く足音は去り、教卓内からは二つの安堵の息が出て。

「…って…そ、そうだオッサン監視カメラは!」
「とっくに細工済みだ、誰も映ってねぇよ」
「…そげな事があっから見回りスてンでねか教頭…」
「ま、それより続きといこうぜ」
「まっ、まだこのまま続ける気なンかオッサン!」

ヒノケンは教卓内部を背にして立ちバック時の挿入をしたまま座り込み、アツキを自分の身体の上に乗せていて、いわゆる背面座位の状態。
立ちバックのように蹂躙する抜き挿しは出来ないが。
これはコレ、といった風で切り替えの早いヒノケン。

じゅ…ぢゅぷ、じゅぷっ…ぐちっ…

「ッあンっ…あう、ッ…う、ごくで…ねっ…!」

最先端技術を用いられている才葉シティに存在する才葉学園の高等部には、当然ながら校舎内のあらゆる箇所にもそういった技術が施され、先の教室の監視カメラなどもその一環。
故に教卓も単なる机ではなく、高性能パソコン等の電子機器が内蔵された物であり、結果的にインターネット発達以前に見たような教卓よりもサイズは大きい。
故に二人が潜り込めるスペースも出来たものの。
狭い箱の中に居る様な閉塞感は拭えず、そしてそれが一層の密着を生み出し性感を誘う。
教室内での情事、それも教卓内などという異質なシチュエーションに、アツキの口からは否定したい旨の言葉が出るけれども身体は抗えず。
僅かな律動にも興奮を示し、キュウキュウとナカに挿入されたヒノケンの自身を締め付け、甘い声を上げて与えられる情欲を貪り耽る。
アツキの喘ぎに薄く釣り上がるヒノケンの口角、不意に転がり込んだ状況を愉しむ表れ。

じゅっ、ぢゅぷっ…ぢゅぶ…っ!

「ふぅッ、ア、あンっ…あッ…はっ、あンっ…!」

強くはない刺激の筈なのに、閉塞と密着はアツキの身体に熱を帯びさせ続けていて、意識は勝手に繋がり交わる後孔やナカへ集中させられる。
突き上げられる度、トロトロになってしまう感覚。

「へっへっ…よいせっ、と…!」

ガンッ!

「あでっ!」

興が乗り体勢を少々変えようとしたヒノケンだが、アツキを犯す事に熱中し過ぎて今が教卓の中であるという事をすっぽりと忘れてしまっていた模様。
突如として思いきり後頭部を打った音が内部に。

「…アホでねかオッサン…」
「何だと小僧」

ぐい…っ…!
…ぢゅぷぷっ、ずぷ…じゅぷ…っ!

「ひあッ、アンっ、あン…っ…!」

呆れたようなアツキの物言いにカチンときたのか。
ヒノケンはアツキの膝裏を抱え上げて角度を変えると、可能な限り腰を突き上げてナカを穿ち始め、教卓内からは性交とアツキの嬌声が一際大きく漏れ出す。

ぐぶっ、じゅぽっ、じゅぽ、ずちゅっ!

「ふァっ、あっ…アンっ!あ…ふぐっ!?」
「バカヤロウ、流石に声がデケェ」
「んんン〜〜〜! ンン、んん〜〜〜っ!!」

恐らく、「だったら、こげな場所でスるでねぇだ!」といった旨の台詞を口にしていると思われるが、残念ながら先程よりも強く手のひらで口を塞がれてしまい何の言葉にもならない。
最も、アツキの言わんとしたい事の想像はつく。
それでもヒノケンは今の状況のセックスを続けるが。
取り敢えず、口を塞がれたまま一頻り騒いでいるのが落ち着いたところで手を離してやる。

「…ぷは…っと、に…教頭センセーが戻って来て見付かったらとか、考えた事ば無いンか!」
「そん時は、俺は二度とお前にゃ近付けなくなるな」
「! ……そ…そげな…事…ッ…」
「イヤだ、ってか?」
「…ッ! …オラは別に…センセー…の事、とか…」

肩越しにアツキの顔を覗き込み囁くヒノケンの声。
何処か意地の悪い、見透かしたような声。


───こういうところが。
アツキが、この男を最悪だと思う所以で。

けれど。

困った事に。


「…へっ…そろそろナカに出すぜ、アツキ…!」

じゅぷっ…ずちゅっ、ずぷっ、じゅぽっ…ずんっ!

「は、ァっ…アン、アァっ…! セン、セー…っ…オラもッ…オラもイクっ、イクだ…あッ…!」

びゅぶるるるるっ! びゅーっ、びゅるるっ!
…ドクドクっ…ドプっ! ドプッ…!

「クゥウ…ッ…とんだ締め付けっぷりじゃねぇか…!」
「ぅあッ、ぁあッ…はっ、あっ、ぁあ〜〜〜ッ…!」

びゅるるるっ…! びゅくっ、びゅくるるっ…!
…ぱたたっ…ぱた…ぱたっ…

自分のナカで躊躇いなく吐き出されるヒノケンの欲の熱さに焼かれ、アツキも勃ち上がっていた自身から白濁を堰切らせて教室の床に散らし。
意思を伴わず締め付けてしまうヒノケンの自身は、なおもアツキのナカに精を注ぎ込み。
身体の奥底から焦がされる熱、熱、熱。
この熱を感じて良いのは自分だけなのだと、悦に浸る思考の中でヒノケンへの独占が募り。


つまりは───最悪だと思っている自分を抱く男の事を、どう足掻いても拒否は出来ず。


つくづく。
そんな自分もサイアクだと、アツキは思っている。

■END■

2006.11.01 了
2023.01・旧作から全面リメイク
clap!

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