【Rockman.EXE@】
White・Valentine's Day【RE】
「甘いモノは、それほど好まない」と。
何の話をしていた時かは忘れたが、とにかくヒノケンの記憶ではアツキにそう伝えた筈だ。
しかしながら本日は───2月14日。
世間的に言うところのバレンタインデーに、アツキが連絡も無くやって来たかと思ったら。

「ほれオッサン、オラからチョコレートやるだ」

と言われたのならば、ヒノケンも悪くは思わない。
何だ偶には素直な時もあるものだと。
油断したヒノケンには、アツキが浮かべた笑みの中に謀を秘めている事を気付けなかった。

─…

「…何でホワイトチョコレートなんだ? 小僧」
「あれ、苦手だっただか? ホワイトチョコレート」

リビングにアツキを迎え入れてソファへ並び座り、贈られたチョコレートの箱のリボンを解いて封を切るまでのヒノケンは、明確に表さないものの機嫌の良さを窺わせていたのだが。
箱を開けて現れたのは、ホワイトチョコレート。
ラッピングからヒノケンでも知っている、人気メーカーから出ているスイーツ。という点で見ればアツキは手を抜いて選んだ品では無いと考えられるけれど。
どうにもホワイトチョコレートが持つ甘さは、ヒノケンの中で特に受け付け難い質のモノ。
…という旨も。
アツキには伝えた記憶が、ヒノケンにはある。

「…俺は、特にホワイトチョコレートは得意じゃねぇと、お前に言ったと思うんだがな」
「ふ〜ン…そげな話、されたかもスれねぇだなや」

ニンマリ

「オラ、うっかりスとっただオッサン」
「(…この小僧はよ…)」

今度は流石に気付く、会話の途中で挟まれた笑み。
アツキの目的はヒノケンに大人しくバレンタインのチョコレートを贈る事ではなく、バレンタインを利用してささやかな嫌がらせを含んで揶揄う為に訪れており。
更には。

「美味いっちゅうのに、勿体ねぇだな」

ひょい…ぱくっ…

ヒノケンと違い圧倒的に甘い物を好むアツキが。
自分用として買って来たのだと、これで判明。

「…って、お前が食ってどうすんだバカヤロウ!」
「えー? ンだって、オッサン食わねンだべ?」

ひょいっ、モグ…

「……おい小僧」
「ンー? …ん、ンぅんンッ?!」

…ちゅくっ…!…ぬるぅ…っ…

アツキの意図を理解したヒノケンは。
そっちがその気ならばと切り替えて低く囁き、意地に火を点けチョコレートに食らい付く。
ただしそれは、アツキが咥内に含むチョコレート。
深く舌を捩じ込み、アツキの舌ごと味わう。

にゅる…ぬるるっ…にゅるっ、じゅう…っ…!

「ふ…ッ! ンふ、ぅ、…ン…ぅ…ッ!」

ただでさえ自分のモノではない舌が咥内へ侵入しているのに加えて、アツキは立て続けに二粒のチョコレートを放り込み、それはまだ形を成していて。
故に更に酸素を求め難く、どうにか口を開いて取り入れようとすると、口唇の端から溢れ零れてしまう唾液を咥内へ流し戻そうというのもままならず。
伝い落ちる唾液の跡には溶け出したホワイトチョコレートも含み、首筋まで妖しく濡らす。

「…ぷぁッ…い、き…ッ…ふぐッ…!」

チョコレートは次第に小さくなり、儚く消え。
だけれど絡み寄せる舌は止まらない。
僅かな隙に逃れてアツキが酸素を得る事が出来ても、すぐさま再び塞がれて舌は這いずり。
激しく掻き回して咥内を犯し、じっくりと堪能したところでヒノケンは漸く口唇を離した。

ぬる…にゅぽっ…ちゅ…

「…は、ァ…はあッ、は…」

ズリ…ズルズル…ッ…

「おっと、危ねぇな」
「だ…誰のせいだべな…無茶苦茶スるでねぇ!」

かなり骨抜きにされてしまったアツキは。
座っていたソファから、ずり落ちそうになったところをヒノケンに支えられて姿勢を戻し。
どうにか息を整えて抗議の意思を見せたのだが。

「へっ…確かに"無茶苦茶"にされた後みたいなエロい面になってんな。そんな口の端から白いの流してよ、"飲まされた"みてぇな顔してるじゃねぇか、小僧」
「な…! は、離さねッか! 顔ば拭くからッ!」

身体を支えてやっているというのは表向き、本当の目的はアツキの両腕の自由を奪う事。
気が付けばヒノケンはアツキの身動きが取れぬように腕の中へと収め、抱きすくめている。

「取り敢えずコレでイイだろ」
「な……く、ふ…ッ…」

そう告げるや、ヒノケンは口唇の端に唇を寄せ。
流れ落ちる跡を薄める様に舌でなぞり始め。

…れろ、れろぉっ…ちゅ、じゅっ…

「…ッ…! …は、ァン…んッ…」

舌が首筋に寄せられると。
堪らずにアツキからは漏れ出る甘い声。

「小僧は首が弱ぇか?」
「…る、るっさ…そげなこ、と…」
「へっへっ…可愛いじゃねぇか、もっと鳴きな」
「ひゃう…ッ…! ぅ、あ…くぅ、ンっ…!」

丁寧に首筋を舐め取り、時には強く吸い上げてやると堪え混じりの切なげなアツキの声。
ヒノケンの耳に心地好く響き。
興が乗り、所有の赤い印を増やしてゆく。

…ちゅううっ…ちゅ、く…っ…

「さて、と」
「も、もう…満足スたンでねのか、オッサン…」

やっとヒノケンの顔が首から離れたところで、アツキは止めるように懇願の声を上げるが。
火の付いたヒノケンが、これで終わらせる筈は無い。

「何言ってやがる、折角お前が俺にくれるっつったチョコレートだ…全部食ってやるよ。…とはいえ、"このまま"じゃ甘ったるくて食いきらねぇ」

ならば、どうするというのか。
熱と艶を混じえた息を繰り返すアツキには、ヒノケンが何を言わんとしていて何をしようとしているのか思考は巡らず、ただ視線を返すのみ。
そんなアツキの様子にヒノケンは何時ものように口角を上げて笑むと、アツキの身体は離さぬまま片腕でテーブル上のチョコレートの箱からリボンを抜き取って。
口唇を耳元へ寄せ、密やかに。

「…お前を喰いながら、食ってやるよ」
「…は、はぁッ!?」

シュル…ジュルッ、キュ…

「ンなッ?! お、オッサン! な、何スてンだべ!」

ヒノケンの言葉でアツキが面食らっている間に、当のヒノケンは抜き取った真っ赤なリボンを、呼吸を阻害しない程度の弛さを保ちつつアツキの細い首へ。
手際良く結ばれた赤色は図らずも。
"誰かさん"に向けて贈る意味が込められている様。

「コレでよしと。…ま、一回はやってみたいモンだよな"プレゼントは自分"ってヤツをよ」
「あ…アホかオッサン! オラはンな気分でねぇ!」
「へぇ? お前の身体は同意してるみてぇだぜ?」

ツツ…ぐに…

リボンを抜き取った手が伸びる先はアツキの下肢。
指先が辿り着いた先には、熱を帯びて硬度を増し始めているアツキの自身が感じ取れる。

「〜〜〜…ッ!」
「口が何と言おうが、ココは素直だよな。…へっ」

スリ…スリッ…

「…ッふ…ぅ…や、めねッか…!」

指を滑らせ軽く撫で回す、それだけの刺激。
けれどアツキの身体は反応を示して漏れる熱い息。

「我慢する事は無ぇだろ。…好きだろ? セックス」
「ン、ンな訳ッ…! …えぁあッ?! どわぁああッ!」

ぐんっ…! …ドサ…ッ…

ソファで性交に及ぶのは場が狭いのだろう。
ヒノケンはアツキを抱き締め直したかと思うと軽々その身体を持ち上げ、テーブル脇の空いている床へとアツキの背中を転がし預け、自らは覆い被さり逃げ場を塞ぐ。
そうしてアツキを見下ろすと不服そうな顔はしているものの、完全に拒否する様子は無い。
今はヒノケンの両手はアツキの顔の傍へと置かれ、逃れられないという意味では同じかもしれないが、アツキ自身の両手は抱き締めから解放されていて。

「…ッたく…スっかたねぇオッサンだなや…」

自分に対しても向けた、仕方なさの溜め息ひとつ。
自由な両手をヒノケンの身体に回して贈るキス。
とても短い刹那の口付けから離れたアツキは、不貞腐れたような表情をしていたけれど。ヒノケンは僅かに目を細める、アツキなりの性交へ対する了承に。

「へっへっ…認める気になったかよ」
「…や、やッかまスぃべ…」

口角を一際に上げてアツキの衣服を脱がし始め、総てが露わになった裸身を見下ろしながら、ヒノケンはテーブル上に置いたままのチョコレートの箱に手を伸ばすと。
ひと粒の甘味を、アツキの咥内へ。

「ホラよ、もう一回だ」
「…ン…ッ…ぅ、む…」

ちゅく…にゅむ…にゅるっ、にゅるる…

口唇を重ねて再びアツキに侵入するヒノケンの舌。
相変わらず分厚い舌は遠慮無しに咥内を蹂躙し、アツキの舌とチョコレートを纏めて絡め取るかのように這い回ってはいるが。
最初ほどの無理矢理さは色濃くなく、"味わう"という意思が感じ取れる交わり。チョコレートの事は勿論、アツキが持つ青い焔の熱の事も。

「っふ…ン、ん…ぅ…」

…スル…プチ…ッ…プ、チッ…

貪られ、アツキには切なげな快感が込み上げ。
体温が恋しくて堪らない。
咥内を犯され続けたままアツキはヒノケンのシャツのボタンに手を掛けると、ぎこちない手つきで一つ一つ外してゆき。総て外し終えて直に手を肌へ触れさせれば。
掌に伝わる、心なしか早い鼓動。

…ちゅぱっ…

「……は、ッ…はぁっ…オッサ、ン…?」
「ちょっと待ちな」

アツキの咥内にチョコレートを残して口唇を離し、ボタンの外されたシャツを脱ぎ捨てて。
同時に下半身の衣服も総て脱ぎ払い、裸身となって再びアツキに跨がり覆い被されば、アツキはすぐさまヒノケンの背中に両手を回して抱き締め。
互いの体温を感じ合う、触れる炎と焔。
暫しの抱擁を経て今一度、重なるのは口唇。

「(…ああクソッ、この熱さ…堪らねぇ)」

アツキの咥内に舌を滑り込ませると、チョコレートは既に塊としての体裁は成しておらず。
ぬめり溶けた白い甘さだけがヒノケンの舌を迎え。
舌同士を絡ませて溶けたチョコレートを可能な限り舐め取ると、ヒノケンはチョコレートを纏った己の舌を自らの咥内へと戻して甘い余韻を愉しむ。

「へっ…美味かったぜ。…さて」

口唇が離れ、アツキは欲を秘めた双眸を見せ。
最初の口付けの時点で反応していたアツキの自身。
とうに勃ち上がり、覆い被さるヒノケンの逞しい自身にも重なり触れて望むのは"この先"。

「そいじゃ次は、お前の身体でな」
「ンぁ…ッ…ふ…」

ヒノケンは摘んだ次のひと粒を指ごとアツキの咥内へ含ませ、有無を言わさずに掻き混ぜ。
程好く溶けたところで取り出し、アツキの胸元へ。
まだ塊としての形が残るそのチョコレートに舌を乗せたヒノケンは、胸元から広げるようにチョコレートをアツキの身体へ塗り付けるべく舌を這わせてゆく。

「んン…ッ…は、ぁン…ッ…」

度重なる深い口付けで敏感になっている身体を、時にポイントを突いて吸い上げてやれば、甘く艶めく声がアツキの口から。
強くはない細かく微かな刺激、けれども今の上気した身体にとってそれはとても毒な行為。
決定的な快感を与えられないソレはアツキを焦らし、自然と身体を捩らせ腰が揺れ動き。
熱く昂り、ビンと勃った自身に触れてほしい。
重なり触れていた筈のヒノケンの自身が気付けば離れており、足りない熱がもどかしくて。
そんなアツキをヒノケンは当然ながら理解しているが、アツキの自身には決して触れず。また新しいチョコレートを口に含み、アツキの身体へ弱い刺激を与え弄ぶ。

れろっ…ちゅ、ちゅっ…ちゅうっ…

「ァ…ンッ…! …や、ぁ…はンッ…も…もッ…」

もっと、激しく強く燃える様。
何よりも熱いヒノケンの自身が欲しい───
けれどアツキのプライドと羞恥心が言わせない。
ヒノケンは、自分を求める言葉を聞くまで与えない。

「…オッサ、ン…ッ…ひゃ、あッ…?!」

…つぷ…ぐりっ、クニ…クニクニ…グニ…ッ…
……ズ、ずっ…ずぷぷ…っ…!

「いッ…! う…くぅ…ッ!」

だがヒノケンも決して余裕が有る訳ではなく。
少しばかり事を急いて、アツキの後孔に指を滑らせ。
自身から零れた先走りが辿り着いているのを確認すると、指に絡ませて蕾を指の腹で解し。
まだ充分ではないが、ナカへと埋め込む。

「や、ぁ…はぁ…ッ…」

ぐち…くちっ、ぐちゅっ…ぐに…
…ず…ずぷ…ずぷぷ…っ…

指とはいえ感じる圧迫。
頃合いを見て挿入される指の数は増え。
三本でナカを掻き回され抜き挿されるナカはやがて慣れ、肉壁はヒノケンの指にキュウキュウと吸い付き、まるで───指だけでは物足りないとでも。

ずちゅ、ずちゅっ、ぐちゅぐちゅっ…!

「はンッ、アッ、ア…! オッサン…オッ、サ…ン…オラに…ッと、ぉ…指…で、ねくて…ぇ!」
「…聞こえねぇよ」
「…ッと…も、もッと…ほスぃ…べ…ッ…オッサンの…ぉ…イれ、てほスぃ…いっ …ふ、ぁッ!?」

…にゅるるるっ…にゅぽっ…
ぐいっ…!
ぬち…ぐ、ぷンっ!…ぐぷぷぷっ…ぐぷッ…!

「〜〜〜ッ! いき、な…ス…! ひァッ、あ…!」

アツキが劣情に屈した台詞を完全に聞き終わる前に。
ヒノケンは指を引き抜いて身体を起こし、強引にアツキの両足を広げてしまうと、露わになった淫らにヒクつく後孔へ屹立した自身を埋め込んだ。
チョコレートはとっくに溶け失せて、熱を帯びるアツキの身体から誘うように立つ甘い香。

「へっ…まったく、強情な小僧なんだからよ」
「はッ、あ…ぅ、オッサン…」
「望み通り、俺の炎で焦がしてやらぁ」

どうしても自分を求めさせたかったのだが、ヒノケンの方もあと一歩のところで明言はせず、しかし確かに本心では求めてきているアツキを前に、我慢の限界が近付いていた模様。
剛直を埋め込んだまま、口角を上げて腰を掴み。
最奥まで、欲望のままにアツキのナカを穿ちだす。

ずちゅ、ズンッ! じゅぷっ、じゅぽっ!
ぱん、ぱんっ、ぱちゅっ! ずぷ、ずぷぷっ!

「ひゃ、ァあンッ! あ、ぁ、ソコぉッ…エエだ…ぁ! オラの、に…もッ…触ってけ、れ…!」
「へっへっ…随分、素直になったな。こうかよ」

ぬちゅっ…ちゅくっ、くちゅ、ぐちゅ、にちゅっ…!

「ア、あッ…ソレ…っ! オッサンの手ぇ…熱…ッ!」
「お前のコレも相当アツいぜ…堪んねぇ、ナカもな」

ぐっぷりとアツキのナカに自身を埋めたまま。
ヒノケンは触って欲しいと願うアツキね自身を焦らさず握ってやり、力強く扱き上げると。
焼けそうな熱が指と自身を行き来し、アツキのナカはヒノケンの自身を一層に締め付け。
窺わせるのは、射精の近さ。

キュウッ…キュンッ、キュウウッ…!

「オラ、ぁ…もッ…駄目だ、べ…出ツまう…だ…!」
「…ッ…俺もヤベぇな…へっ、仕上げといくか…!」

くちゅ…ぐちゅっ…
…じゅぶっ、じゅぽっ、ぱちゅっ、じゅぽっ!
ずぶっ、ずちゅっ、ぱん、ぱんっ! …どちゅっ!

「ふぁ…ッ! あァアンッ…アッ、い、イク…ぅ…!」
「…クゥウッ…! 出すぜアツキ…っ!」
「はッ、あッ、あ゙っ…ぁあ〜〜〜ッ…!」

びゅるるるっ…! びゅる、るるッ…びゅく…
…びゅぶるるるっ! びゅーっ、びゅる、ぴゅぶっ!
トプトプ、ドプ…トプンッ…

アツキの自身を握ったまま。
ヒノケンは埋め込んでいた自身の抜き挿しを再開し、アツキの好い箇所を的確に突き穿ち。
射精へと誘い、自らも誘われる。
ズンッと奥の奥までヒノケンの自身が突き刺さされたアツキは、鈴口から白濁を堰切らせ。
その射精により収縮したナカの締め付けにヒノケンもまた白濁を放ち、びゅるびゅるとお構いなしにアツキのナカを白く染めようと注ぎ込んでゆく。

びゅぅーっ…びゅるるるっ…ドプ、ドプンッ…

「ど…ンだけ、出スつもりッ…だべな…!」
「俺も知らねぇよ、出ちまうんだからな。…へっ」
「ッとに、こンのオッサンは…」

精が注がれる度にアツキの身体は小刻みに跳ね。
蕩けた眼差しでヒノケンを見詰め。
深く焦がれ浸る、情交。

…にゅ、るるるる〜…っ…ぬぽ、ンっ…!
……びゅぷっ、びゅぶ…る…ぶぴゅっ、どろ…

「ふぅッ、は…アッ…」
「ホワイトチョコレートみてぇなのが溢れてるぜ」
「…最低かオッサン、思っても言うでねぇだ!」

漸く精を出し切ったヒノケンの自身。
ゆっくりとアツキのナカから引き抜くと、栓を失い弛緩した後孔は開いてしまい、注ぎ込んだ白濁が小出しに噴き出てくる光景はヒノケンの所有欲をくすぐり。
支配した征服感の想いに満ち、アツキに覆い被さる。
───けれども。

「(…ああ、ったく)」

チョコレートのように蕩けてはいるが。
ゆら、ゆら、瞳の中の青い焔に赤い炎は惹かれ。
征されているのは、ヒノケンの方なのかもしれない。

「……オッサン」

伸びるアツキの腕がヒノケンの身体を捉え。
重なり交わる体温と体温。
他の誰かでは決して得られぬ熱が、とても愛しくて。

───…

「あ〜、スッキリしたぜ」
「……はぁあ…ッとに、このオッサンは……」

シャワーを浴び終えて、ドライヤーで乾かした赤髪を整えながらヒノケンは満足気な様子。
二人揃ってチョコレート等でベタベタになった身体を洗い流し、綺麗になった筈なのだが。
一緒にリビングへ戻るアツキは、何故か浮かない。

「…そら、風呂でまたヤッてオッサンはスッキリかもスれねっけどな…オラは疲れただ…」
「そうかぁ? お前もスッキリしたんじゃねぇの」
「スッキリどころか、ナカに出されたンがまだオラのナカに残っとる感ズがスるだなや…」
「ソレなら風呂で掻き出してやったじゃねぇか」
「ンだから! その直後にまたスぐ突っ込んできたオッサンのせいで! オラは疲れとるス、ナカに出されたンが残ッとる気がスるッちゅうとるンだべ!」

大量に注がれたヒノケンの白濁。
当初、風呂の目的にはアツキのナカからソレを掻き出すという事を含めていたけれども。
自分に尻を向けて後孔から精を零すアツキの姿を見て、ヒノケンは精を掻き出す事は違えずに行ったが、すぐさま"延長戦"にも及んだ模様。

「大体、風呂じゃちゃんと外に出しただろ」
「ンな問題でねぇだ……ン?」

ヒノケンが反省するとは最初からアツキも思っていないが、一応の抗議をしたところで。
アツキがテーブル上の"あるもの"に気付く。
それは真っ白な。

「…一個だけ残ったンか?」
「ああ、チョコレートか。…普通には甘ったるくて俺には食いきれねぇ。小僧が食べな」
「なンね、全部食べるとかぬかスておいて」

白の正体は最後のホワイトチョコレート。
開けたまま置きっぱなしにしていた箱の中から摘み上げたアツキは、また暫く購入する機会は無いだろうと、一度じっくり指の中の一粒を見詰めてから。
咥内へ運ぼうとした瞬間、閃く。

「…オッサン、これなら食えるンだべ?」

そう言ってヒノケンの傍に寄るアツキ。
口唇でチョコレートを挟み、瞳を閉じてヒノケンに。

「……へっ」

アツキの後頭部へ手を添え。
ヒノケンも口唇でゆるりとチョコレートを受け取る。
咥内へ白いチョコレートを収め。
アツキには───純粋に恋人へ捧げる様な、とても愛しげで優しい口付けを重ね贈って。

……ちゅ…っ…

「…やっぱ甘ったりぃな。今回で勘弁してくれ」
「ふふン、そこまで言うなら勘弁スてやっかな」

当初の予定とは少々異なる形となったが、最終的にはヒノケンの方が音を上げたカタチ。
一応は目論見が成功した事で満足したのか、アツキは浮かない顔から一転して晴れた表情。

「ところでオッサン、そろそろ腹減らねっか?」
「そうだな、夕飯を食べに出掛けるか」
「オラ、激辛のが食べてぇだなや」
「…バレンタインの飯に激辛を食うのかよ、甘いのよりは俺も辛いモンの方がイイけどな」
「ならエエでねか。ほれ、サッサと行くべ!」

言うや否や。
既に玄関へ向かい始めたアツキにヒノケンは呆れ顔。
先程までの浮かなさなど微塵も感じられない。

「(…ま、少しカラい位が…俺達らしい、か)」

まだ口内に残っていた最後のホワイトチョコレートを、少し名残惜しそうに喉の奥に通し。
ヒノケンは、玄関でオッサン早くとギャーギャー騒いでいるアツキの元へ向かって行った。

■END■

2005.03.14 了
2023.05・旧作から全面リメイク
clap!

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