【Rockman.EXEA】
まるくてアツくて美味しい時間

「…ああハイ、そっスか。そいじゃ俺だけ…ハイ」

自宅リビングでオート電話による通話中のヒノケン。
時刻は休日の昼前、擬人化プログラムを実行中の自分のナビ達と昼食をどうするか、などと考え始めていたところに掛かってきた不意の電話。
リビングに居合わせていたヒートマンは邪魔にならぬ様に黙り、終わるのを待っているが。
着信があったのは才葉学園の教師として登録してあるヒートマンのPET、それにヒノケンの話し方を聞いても通話相手は学園関係者だろうなと推測していて。
擬人化プログラム中でPETからは出ていた為に着信相手がすぐには分からなかったけれど、静かにヒートマンが履歴を探るとマッハ先生だと分かった。

「んじゃあ、今から向かうっス。また後で」

……Pi…

『…学園から呼び出しか?オヤジ』
「学園からっつうか、マッハ先生から"出来れば"って頼みだな。教材整理だ何だで体力仕事が出来そうなヤツって事で声が掛かったカンジだ」
『はー、何だかんだでアナログ資料も多いからなぁ』

ニホンの中でも最先端ネットワーク技術が用いられている才葉シティ、そんなシティに存在する才葉学園も当然ながら電子化が他よりも進んでいるが。
だからといって紙の資料等が完全に廃止されている訳ではなく、ヒノケンの第一研究室ひとつを見ても教材の詰まったダンボールがそこらに積まれており。
学園全体でも"現物"の資料等は溜まる事から、どうやらマッハ先生が学園に人の少ない休日を利用して整頓し始めたけれど、予想以上の量だったらしく。
ヒノケンに応援を求めてきた模様。

「そんな訳だから、ちょっくら行ってくるぜ」
『俺も行って手伝うか?』
「現実世界でもナビ任せじゃ人間、錆びちまうだろ。一人手伝ってくれりゃイイとか言ってたし、俺だけで行ってくるからファイアマン達と留守番しててくれ」
『了解だぜ。…あ、オヤジ。昼飯はどうするんだ?』
「…わりと微妙な時間だな…場合によっちゃあマッハ先生と一緒にっつう話になるかもしれねぇし、俺の分は考えず食べるならお前らだけで済ませな」
『リョーカイ、兄貴達に伝えとくわ』
「おう、頼んだぜ」

ヒートマン自身は擬人化プログラムを継続して現実世界で留守番をしてもらうが、ヒートマンのPETには学園内に入る際に必要な通行証データが入っている為。
ヒノケンはナビ無しのPETを手にリビングを後にし。
程なくして支度を済ませ外出する玄関の開閉音が、ヒートマンの聴覚プログラムに届いた。

─…

『…って事で、オヤジは出掛けたぜ』
『……そうか…』
『ヴォ…ヴォオオ…?』

二階の奥に居てヒノケンが出掛けた事に気付かず、昼食をどうするのかフレイムマンを伴いリビングにやって来たファイアマンは。
ヒートマンから事情を聞き、突然の不在に落胆気味。
その様子にフレイムマンは少し心配そう。

『そんなカンジだから…昼飯どうする?兄貴』
『ヒノケン様が居ねぇんじゃな…』
『だよなぁ。別に俺らは現実世界でのメシが必ず欲しい訳じゃねぇし、今日はパスするか?俺が留守番するから兄貴達はPETに戻ってて構わねぇぜ』
『……いや、待て、ヒノケン様が居ないのなら』

落胆したファイアマンだが、何かを思い付いた様子。
主の不在の方が都合が良い事。

『前に小僧と馬鹿バーナーがヒノケン様とタコ焼きの焼き上がり勝負をするとか言い出しやがって、ウチでタコ焼き器を買っただろ』
『そうだな。…アレっきり使ってねぇけどな』

アツキ達はヒノケンとタコ焼き屋の女性との間に何があったのかは本当に知らず、単純な何時もの負けず嫌いからの発展でそんな勝負を言い出したのだが。
傍で事情を見届けたファイアマンからしてみれば、傷心に触れるのではと慌てたけれども。
ヒノケンは…もう大丈夫だと言い、家庭用のタコ焼き器が導入されてアツキ達とタコ焼きの焼き上がり勝負(引き分け)が繰り広げられ。
しかしヒートマンが思い返すと、タコ焼き器を使用したのはその一回だけだったと気付く。

『…ヒノケン様はもう大丈夫だ気にするなって言うけどよ。やっぱりまだな…進んでタコ焼きを出す気にはなれねぇんだが、あの時の粉が結構余っててよ』
『…なるほどな、俺らだけなら寧ろって訳だ』
『そういう事だ、構わねぇか?』
『ああ。…フレイムもイイだろ?タコパしようぜ!』
『ヴォ!ヴォオオオ!』

恐らく詳細はよく分かっていないと思う。
だが関係無いといった様子でヒートマンに話を振られたフレイムマンは元気に唸りを上げて返事をし、兄達とのタコパ開催に大賛成の意を示した。

『よし。なら準備するか』
『タコは今ウチに無ぇだろ?買ってくるか?』
『そうだな、頼む』
『よっしゃ任せな、買い物行こうぜフレイム!』
『ヴォォオオン!』

主人が不在なのは寂しいものの。
タコ焼きパーティーの響きにウキウキ気分は三様。
まぁるく楽しい時間が始まる予感。

─…

……シャパー…ッ……

『…こんなトコロか、タコとか入れな』
『オッケー。そらフレイム、天かす入れてみろよ』
『ヴォッ…ヴォォォ…』

トプン、トプ…
…パラパラ…パラ…ッ…

ヒートマンとフレイムマンがタコを買って帰宅した時には、ファイアマンがタコ焼き器の準備や他の材料の用意を済ませてくれていて。
タコも適当な大きさにカットされてタコパの開始。
機器にファイアマンがタコ焼きの粉を溶かした液を流し入れると、各自タコや天かすといった中身を投入してゆき、焼けてくるまで暫しの待機。

…シュー…!

『ん、なぁ兄貴。前に使った時よりも、家庭用のタコ焼き器にしちゃ火力出てねぇか?』
『ヒノケン様に倣って火力源をダルスト系のウイルスに換えてみたからな、才葉のインターネットにはボルケルギア系が居ねぇからどうかと思ったが…どうやら大丈夫みてぇだな』
『チャンプル系じゃダメか?』
『アイツらも燃えているが、攻撃の性質的にこういう機器の役割には向いてねぇと思うぞ』
『……ヴォォォッ…』

…つんつん……ぶよぶよ…

ファイアマンとヒートマンがタコ焼きが焼けてある程度固まってくるまで、炎ウイルスの有効利用としてタコ焼き器の火力話をしている間。
ふつふつ焼けるタコ焼きをジッと見るフレイムマン。
大人しく見守っていたのだが待ちきれなくなったのか、こっそりと兄達に知られぬ様に隅っこのタコ焼きをピックでつつく。

『ハハ、まだ早いだろフレイム』
『ヴォッ?!…ヴォ…』
『火力は上げたが、結構掛かるからな』

こっそりしたつもりだったけれど、すぐにバレた。
何もしていないという様にピックを引っ込めるフレイムマンではあるが、特にヒートマンはそんな弟の可愛い一連に対し楽しげに笑い掛けている。

……シュウウゥゥウウ…!
つん、つんつん…

『…そろそろ良さそうだぞ』
『おっ、いけるか?ひっくり返してイイみたいだぜフレイム。丸く出来るかやってみな!』
『ヴォォォオオッ、ヴォ!』

改めて暫し待ち、ファイアマンがピックを取り焼き加減を窺うと程良く固まってきており。
ヒートマンはフレイムマンに返しの合図を出す。

…つんつん……くるんっ

『ヴォッ!ヴォォッ♪』
『上手ぇじゃねぇか。フレイムは結構、器用だよな』
『ヒノケン様が言うところの、余計な思考を挟まないのが寧ろスムーズに働くってヤツか』

改めて隅のタコ焼きにピックを入れ。
くるりと上手く返せたフレイムマンは上機嫌。
楽しくなったのか、次々と他のタコ焼きにもピックを入れて返し始め、ファイアマンとヒートマンはフレイムマンのそんな姿から任せる事にした模様。
くるくると返された半円は、どれも球体に。

『…もう出しても大丈夫だな』
『よしよし、んじゃ適当に皿に分けるぜ』
『ヴォォォッ、ヴォヴ…』
『待ってなフレイム、マヨにソースに青のり…っと、こんなモンか。ほらフレイムの分だ』
『ヴォッ!ヴォ!』

機器の中でまぁるくなったタコ焼き。
熱々の出来立てをヒートマンが三等分で皿に取り分け、マヨネーズやソースなどを掛けてやれば、辺りには暴力的な程に食欲をそそる香りが広がって。
"いただきます"の時間。

『ヒート、カツオ節は要らねぇのか?』
『いや、要る要る。やっぱ踊らせねぇと』
『…粉の方の、カツオ節なんだけどよ』
『ええ…』
『そんなガッカリすんなら、自分で用意しやがれ』
『いやまぁ、粉カツオでも良いけどヨォ…』

ヒートマンとしては花カツオを踊らせたかったらしいが、ファイアマンが用意してくれていたのは残念ながら粉カツオ。
とはいえ折角、用意してくれていたのだから。
粉カツオをパラリと振り掛けて、今度こそ完成。

『っしゃあ、熱々のウチに食べねぇとな!』

モグ…はふ、はふ……がぶっ
……とろ〜り……ッ!

『?!…熱ッッ!な、何だコレ、あっつッッッ!』
『ヴオオォォオオッ?!』

嬉々として一個目のタコ焼きを口にしたヒートマン。
アツいのならばお手の物とばかりにガッツリ一口でいき、多少口内ではふはふさせた後にいざ味わおうと噛んだところ。
タコが入っていると思った中身は全く別の食材が入っていたらしく、弾力ではなくてマグマの如く熱を溜め込んだモノがトロリと流れ出て口内を焼き。
得意な熱さとはいえ構えが無かったヒートマンは悶絶し、隣の席のフレイムマンはそのリアクションにビックリして兄の方を向く。

『…その感じだとチーズ入りを食ったな』
『はあ!?何でンなモン入れてんだよ!』
『合うからイイじゃねぇか。それに期限が近かったんでよ、冷蔵庫の整理ついでに入れた』
『確かにコレはコレで美味いけどな、だけど最初はタコだけにしろよ!そういう変わり種は二陣以降に入れるモンだろ普通!』
『別に決まりは無ぇだろ。…取り分けた部分的に、フレイムのもタコ入りじゃねぇだろ?』

『えっ』『ヴォッ?』

ぱくっ。……もぐもぐ…

『お、おいフレイム!口の中は平気かよ!?』

話の流れのフレイムマンの解釈は。
"食べてみな"だと受け取ったらしく、すぐさま口の中にタコ焼き?を入れて頬張り始め。
自分と同じようにチーズのマグマで悶絶するのではないかと、ヒートマンは懸念したが。

『ヴォヴ!ヴォッ、ヴォォォ…♪』
『…えっ、チーズじゃねえのか?もしかして』
『フレイムのはウィンナー入りだ』
『…ああ成る程、期限近いのがあったなそういや…』

納得と安心したヒートマンがフレイムマンを見ると。
ウィンナー入りが気に入ったのか、ニコニコしながら食べていてヒートマンの表情も綻ぶ。

『…兄貴、もう他にタコ以外のは入ってねぇよな?』
『今回分はな、次は餅も入れてみるか』
『…知らずに食ってたら餅も結構、危ないんじゃねぇのかソレ。聞いてみて良かったぜ…』

今やってるのって"タコ焼き"パーティーだよな?
という疑問がヒートマンには浮かんだが。
何だかんだでファイアマンからもこの状況を楽しんでいる雰囲気が伝わってきたし、フレイムマンは言わずもがな美味しそうに食べていて。
そんな疑問を抱く方が野暮だと切り換えたヒートマンが食べた二個目のタコ焼きには、大当たりサイズのプリプリしたタコが入っていて疑問など吹き飛び。
兄弟との何気ない時間を、大切に過ごす事にした。

─…

……ガチャ…バタン…
…ドタドタドタッ…ガチャッ!

「うぉお何だ、スゲェ良い匂いさせてるじゃねぇか。…つうか、随分ゆっくりな昼飯だな」
『えっ、あ、ヒノケン様おかえりなさい!スミマセン、気付かなくてお出迎えが出来ず…』
「別に構わねぇよ、それより…タコ焼きか?」
『……その……ハイ…』

あれからタコ焼きとタコ以外焼きを作っては食べ、作っては食べしていた三体のナビ達。
他愛もない話を挟んで、のんびりとタコ焼きパーティーを楽しんでいた事もあったせいで、普段の昼食よりもずっと遅い時間まで食べていて。
そうこうしている内にヒノケンが帰宅してしまう。
話に盛り上がっていて玄関が開いた音にナビ達は気付かず、ダイニングの扉が開かれたところで主人の帰宅を理解し、ファイアマンが慌てて迎えるが。
ヒノケンは特に非礼とは感じていない様子で、寧ろダイニングから玄関先にまで届いていたタコ焼きの香りが気になるらしい。
しかし、ファイアマンとしては…折角、主に配慮したのにバレてしまって気不味そうな顔。

「あん?…ああ、俺に気を遣ったのかよ。…ったく、もう気にしてねぇって言ってるだろ」

呆れがちだが、ナビ達の気遣う気持ちも尊重する。
そんな狭間に揺れた様な表情をヒノケンは浮かべて見せ、だが怒るという感情は表さず。
手を洗い、空いている何時もの自分の席へ。

「結局よ、昼飯食ってねぇから俺も食うぜ」
『マッハ先生と食べなかったのか?オヤジ』
「向こうは家族で食べるからってな。…ま、だから。なら"俺も"そうするって帰った訳だ」
『…オヤジ…そっか』

さらりと流す様な言い方だったけれど。
自分達の事を例え正しいカタチではなくても家族だからと、そうした意識を"今の"主から伝えられてヒートマンには温かな想いの炎がココロに灯る。
それは黙って聞いていたファイアマンにも、詳しくは分からなくてもフレイムマンにも。

『しかしヒノケン様、タコ焼きはあるんですが…』
『タコ焼き器とか材料入れてた器とか先にテーブルから避けちまおうって事で、纏めて焼いて取り出したヤツだから、冷めてきているんだよな…』
『ヴォォォォォ…』

ナビ達が言う通りテーブル上にタコ焼き器は既に無く、代わりに真ん中に鎮座しているのは大皿に積まれた、まだマヨネーズやソースを掛ける前のタコ焼き。
ありったけの材料を総て使い切ったのだろう。
だがタコ以外の物も入れて飽きずに食べていたが、流石に後半になると食べるペースは落ちていて、タコ焼き山は静かに熱を失ってしまっていた。
ヒノケンに食べてもらうなら、熱々が良い。

「そんな事かよ、フライヤーあるだろファイアマン」
『…は、はいヒノケン様』
「なら揚げタコ焼きにすりゃイイじゃねぇの」
『おっ、成る程な!さっすがオヤジ、揚げタコ焼きでタコパ二次会にしようぜ!なっ兄貴、フレイムも揚げたヤツ食べてみたいよな?』
『ヴォヴッ、ヴォォォッ!』
『…では、準備しますヒノケン様』
「おう、頼んだぜ」

キッチンでフライヤーの用意を始めるファイアマン。
お腹いっぱいになってきたナビ達も、揚げタコ焼きは新鮮な気持ちで食べる事が出来る筈。
何より、やっぱり主人と一緒に食べるのが嬉しい。
やがてダイニングには香ばしく揚げられるタコ焼きの音、まるくてアツくて美味しい休日のタコ焼きパーティーは、まだまだ開催中。

───それはそれとして。
揚げられた事によって再び熱さを取り戻したチーズのマグマでヒノケンが悶絶してしまい、ファイアマンが平謝りするまで、あと少し。

■END■

◆お題ガチャさんの結果から。

・身内三人で馬鹿をやる
https://odaibako.net/gacha/4634

145 たこ焼きパーティー。「自分が入れたい」と言ってたまにチーズとかウィンナーとか入れてるファイア。「いつひっくり返すの?」とヒートに尋ねるフレイム。「いいよ、ひっくり返して」と合図を出すヒート。はふはふ。

何だか可愛い3ナビ兄弟の結果(*´∀`*)
タコ焼きというヒノケンに因んだ要素も入っているし、これは書かねば〜!と思って最初は日記に上げる小ネタお話として書き始めたのですが。
気が付いたら、自分が決めている4000字という小ネタ範疇を余裕で超えてしまったので(笑)
3ナビ兄弟の通常更新自体が久し振りだったし、小ネタで収めずに書きたい事を詰め込んでみました。ヒノアツも良いけど3ナビ兄弟も大好き!

2022.05.15 了