【Rockman.EXEA】
アツキの想いとバーナーマン
『…暇ならオッサンの家に行かねぇの?アツキ』
「ンー…確かに暇だけンと…」
『あ、オッサンの方が用事が有るとかか?』
「いンや、今日は…普通に休日って言っとっただ」

バーナーマンと会話しながらも、何処かココロ此処に在らずといった様子でいるアツキ。
今日は特に明確な用事の無い、空いた休日。
何とはなしに寮の自室から窓の外を見れば快晴。
才葉シティの天候管理システムである、ウェザーくんの天気予告に違わぬ晴れ渡る青の空。
しかし見上げるアツキのココロは曇り空の様。

『…まあ、しょっちゅう行ってるしな。偶にはそんな気分じゃねー時もアツキにあるよな』
「そげなトコだべ」

会いたくない、というハッキリした理由は無い。
気不味い喧嘩をした訳でもないし、寧ろ今の環境で自分を満たせるのは───ヒノケンだ。
しかし、ふと…そう思ってしまった時。
我に返ったように、アツキのココロに灯されたのは。

「…な、バーナーマン」
『どうしたんだ?アツキ』
「…オラ、なスて此処サ居るンだべな」
『え…何で、ってよ…』

返しに窮するバーナーマン。
だってそれは、誰よりもアツキが解っている筈。
あの赤い炎に出会ってしまったから。

「…オッサンのせいなンは解っとるだ。だけンと…フッと、あンのオッサンと会ってねがったらオラはきっと此処サ居ね。それが不思議っちゅうか…って何言ってるンだべな、オラ」
『…アツキ』
「スッキリとスね話聞かせて悪いべ、バーナーマン」
『そんな事はねーよ。…あのオッサンに会ってなかったら、普通に地元の高校に通い続けてたのは間違いねぇし。才葉に来てオッサンの研究手伝うとか、考えらんなかったんだろ?』
「…そうだなや」
『そんなら不思議に思っても変じゃねぇさ!』

明るく力強く答えるバーナーマン。
青い焔を宿す水色の瞳でPETから真っ直ぐに見詰められたアツキは、少し安心したような。

「…っとに、あのオッサンのせいで変にゴチャゴチャ悩ンどるだ。ハッキリせンのだから」

何がというならば、関係が。
身体の繋がりすら有るというのに、でも。

「…それがイヤだとかでは、無ぇけンど」

アツキ自身、そこはまだよく解っていないから。
あの赤い炎が欲しい、というのは。
思春期の好奇心が傍に居させているだけなのかもと考え、揺れ動く青春の繊細なココロ。

『んー…そうだなぁ…ライバル、とかどうだ?』
「なンかそれは、オラとオッサンよりバーナーマンとファイアマンのが合う気がスるだ」
『そんならアツキとオッサンもだろ、俺達のオペレーターなんだからよ。…つーか、俺の方が熱いんだからファイアマンはライバルなんかじゃねぇよ』
「オラもオッサンに、そう思ってるだ」
『…なるほど。それ言われたら…言い返せねーぜ』

曖昧な関係。
けれど形を持たぬ炎同士なのだから当然な気もする。

『……なぁ、アツキ』
「どスただ?バーナーマン」
『オッサンと付き合うってのは、考えてねぇの?』

基本バーナーマンはアツキとヒノケンの関係の事は傍観だが、気にしていない訳ではなく。
珍しく物憂げにしている今のアツキならば、少しはココロに踏み込み本音が聞けるかもしれない。そうした判断からのストレートな問い。
アツキは僅かに目を見開き、軽く唇を噛み締めた後。
何時も通りの表情でバーナーマンに答える。

「オッサンが頭下げてオラと付き合ってくれって頼ンできたら。…スっかたねぇから付き合ってやるだ。あンのオッサンの相手スてやれンの、オラだけだかンな」
『……それ、多分オッサンの方も』
「同ズ事ば思っとるンだべな、きっと」

アツキからは何処か悟っている"しょうがなさ"が滲む。
結局、今は───このカタチが一番だと。
互いが解ってしまっているから。

「さってと、出掛けっかな」
『おっ、外に出る気になったのか?アツキ』
「こげに天気が良いのに部屋サ篭ってたりスっから、変にウダウダ考えッツまうんだべ。サッサと外サ出てった方がスッキリ出来ンでねぇか」
『そうだな!…で、何処に行くんだ?』

外出の準備を手早く整え。
PETを充電から外してバーナーマンと向き合うと、外出先を問われ───アツキは笑って。

「オラが来ねくてメソメソばスてねっか。…オッサンの様子でも、見に行ってやンべかな」
『アツキ…了解だぜ!』

アツキに負けぬ笑顔をバーナーマンは見せ。
パートナーの気持ちを受け取り、アツキは大切にポケットの中へPETを仕舞い込みドアへ。
今日もまた、あの赤い炎と会う為に。

■END■

2022.04.03 了
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