【Rockman.EXEA】
互いの熱に蕩け合う炎と焔
「ケンイ、チ」

夜、身体を重ねている時にだけ呼ばれる名前。
自分の熱や炎を求め止まない、その表れ。
仰向けに寝かせたアツキのナカへとヒノケンは正常位で押し入りながら、愛しさと共に微かな優越であるとか所有や支配といった生来の欲がココロに灯る。

「…奥まで入ったぜ、嬢ちゃん」
「い、いちいち報告せンでもイイだ! …それに…」
「へっ…不公平ってか? …アツキ」
「……ンっと、ケンイチはズルい大人だなや」

むぅっ、と拗ねて頬を膨らませるアツキの顔。
情事の最中であっても、負けず嫌いは変わらない。
ヒノケンからすれば、そんな顔も余裕を持って受け止める事の出来る可愛らしい反抗だが。
そうして緩んだ口元を悟られたか、アツキは少しカチンときた様な表情を見せると、静かに腕を伸ばして見下ろすヒノケンの首へと回し。
ナカをキュウと締め付けだす。

「…ッ…おい、アツキ…」
「ズルいオッサンなケンイチは、動くのちっとお預けだべ。…オラがまず、確かめっから」

キュウ…ンッ…

「は、ぁ…」

熱く艶を孕んだ吐息。
コンドームの隔たり越しでも、締め付けた事によりヒノケンの昂ぶりを深く深く感じ取り。
自然とアツキの薄く開いた口から漏れ出たそれは、ヒノケンの耳に酷く官能的に届けられ。
思わず、じっとアツキの口唇を見詰める。

…キュ…ッ…キュン…

「…ン…ンぅ…」

しかしアツキはこの行為が巧みという訳ではなく。
ヒノケンを出し抜きたいという気持ちが先行しているだけで、どうにか意思を持ってナカを締め付けてはいるものの、ぎこちなさが窺えていて。
試行錯誤を交え、上手くいかない時にはヒノケンの首に回した腕に力が込められもするが。
正直、ヒノケンにはそのぎこちなさも悪くは無い。
拙さと懸命さの熱に自身が包まれる心地。
薄膜の壁が麻痺しそうな程に滾り、アツキには気取られぬ様に、そっと欲の息を吐き出し。

……ギシッ…

わざとベッドの軋む音を立ててアツキの顔の傍に置く手は、自身に集中し過ぎてしまう熱さを僅かにでも逃がすような意味合いであるとか。
或いは己の優位性を示す軽い圧力の意味であるとか。
ヒノケン自身でも明確には出来ぬ行為だが、自然と取られた動きである事には違いなく。
キュウッと、アツキのナカが一際に締まり寄せるが。
それは意思を伴うモノではなく、男女の交わりの中で本能的に射精を促そうとするモノ。
互いに快感から眼を細め、アツキはヒノケンの自身にピクンと浮かんだ脈動を敏感に感じ取ったのか、腰を捩らせたかと思うと。
顔の傍に置かれた手に頬を寄せ始めた。

…スリ…スリ…ッ…

「ふ…ぁ…ケンイチの、手…あったけ…」
「……へっ」

参ってしまった、観念した想いが滲む声。
圧を掛けてやるどころか、あまりの愛しい仕草にヒノケンの手が蕩け崩れ落ちそうになる。
ココロを許した猫のような表情まで浮かべられ。
今夜は、少しばかり彼女の方が上手。

「…なぁ、アツキ」
「ン…? どスただ? ケンイチ…?」
「もう動いても良いか? 我慢出来ねぇ」

それを聞いた瞬間、アツキの表情が変わり。
ああ、先程の自分と同じような焔がココロに灯ったに違いないと、ヒノケンは理解して。
夜の営みにおいてズルい大人に音を上げさせたのだ。
愛しさと優越の混じる、そして色を孕む顔。
だが敗けたという憎らしさは無い。
そんな事よりも、アツキと蕩け合いたい。

「スっかたねぇだな、許可スてやンべ」
「言ってくれるぜ、イキ過ぎても知らねぇぞ」

…ずる……ずちゅっ! ずぷ、ずぷっ、じゅぷ!
ぱちゅっ、ぱん、ぱんっ!

「はっ、アッ、アンッ…ケン、イチ…ぃ…!」

深く、激しくアツキのナカを突き穿つ。
漸くの律動、炎は焔を喰らわんと貪るが。
焔もまた、炎を受け入れ包み込むから。
綯い交ぜとなり熱を上げる、ふたつの火。自分のモノにして、相手のモノになって───

「アツ、キぃ…出すぞ、イッちまえ…!」
「ぅ、ン…くる、ぅ…オラの奥から…イク、ぅ…!」

じゅぷっ、じゅぶ、じゅぽっ! …ずちゅんっ!
…ぶびゅるるるる…っ! びゅーっ!びゅるっ…!

「っ、クウゥッ…! 分かるかよ、アツキ…っ」
「〜〜〜…! ふ、ア…アァ…ッ! ゴム、越しなンに…ンでも、分かる…だ…いっぱぃ…い…!」

決して越えてはならない薄膜の中へ堰切れる白濁。
一滴たりともアツキのナカには漏れ出してはいない筈だが、自分のナカで射精に及んだのだという事を理解した身体は、自身から精の総てを搾る様に締め付けて絶頂を迎え果てる。
ビクビクと身を震わせるアツキへ、尚も欲を注ぎ。
長い射精の終わり、互いの荒い息遣いが室内に響く。
それも、次第に整い落ち着いた頃。

「……へへー…オッサン…」
「もう"オッサン"に逆戻りかよ、早いだろ嬢ちゃん」
「む…オッサンこそ、わざとでねぇかソレ」
「へっへっ…」

完全にではないが、少しだけ夜から"普段"へと戻る。
他愛のないやり取りは情交の余韻の中、愛おしくて。
未だ繋がる互いの性器に篭もる熱、炎とも焔ともつかず混ざり合い、どこまでも蕩け合う。

■END■

2022.11.15 了
clap!

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