【Rockman.EXEA】
泡に包まれ貴方に触れるバスタイム
───シャアアァァアア…ッ…

「ふー…雨サ降るとか事前に分かっとっても、やっぱス濡れるンは憂鬱になッツまうだな」

雨の中を歩いて冷えた身体に、温かいシャワーを浴びて少しは気が晴れた思いのアツキ。
今日は休日なのだが、外は生憎の雨。
けれども明日からのヒノケンの研究に必要な買い物へアツキも付き合う事となり、雨の中をわざわざ二人で出掛けて行き、やっと済ませてヒノケンの家へ。
そうして戻るや否やアツキはお風呂に向かった模様。
才葉シティの一角であるスカイタウンには天候管理システムであるウェザーくんがシティの天気を担っており、天候を変化させる事も可能なのだが。
基本的に被害が出そうな程の悪天候時や、シティ内で大きな行事等が行われる場合以外では無闇に天候を変えてしまう事は無く、予告として伝えられる。
『しとしと降りの雨なのら!』とは今朝の天気予告で、全く違わず降り続ける小雨の曇天。
アツキが浴びるシャワーよりも勢いの無い雨はしかし、しっとりと傘をすり抜け服や身体に蓄積してしまい、ザァザァと降られるよりタチが悪い。

…ガチャ

「やれやれ、まだ梅雨じゃねぇんだから休日の雨くらいウェザーの奴で晴れさせろよな」
「ってオッサン!何を勝手に入って来てるだ!」
「ああ?別に風呂なら何度も一緒に入ってるだろが。何を今更、恥ずかしいってんだよ」
「い、一緒に入るのって大体!えっちの後でねぇか!ソレとコレとは…何か違うんだべ!」
「…ンな違うモンかよ、とにかく俺も入るわ。雨に濡れたままじゃシケてしょうがねぇぜ」
「う…むむ…ス、スっかたねぇだな…」

アツキに構わず浴室内に入るヒノケン。
当然ながら自分と同じく裸であり、何度も既に見ているとはいえ急で、ココロの準備が出来ていなかったアツキは狼狽えてしまったけれど。
"雨に濡れたまま"がイヤなのは、よく解る。
目のやり場に困ってドキドキしながら、ヒノケンの分の洗い場のスペースを少し空けると。
浴室の扉が閉められた。

「適当なところで俺にもシャワーをくれよ」
「ン、オラはそろそろ…ホレ、オッサン」

ヒノケンに自分が使っていたシャワーを渡し。
心地好さそうにシャワーをヒノケンが浴び始めたところで、丁度良く浴槽のお湯が張られ。
アツキは温度を確認すると、そろり。
湯の中へ身体を沈め浸かってゆく。

───チャポ、ン…

「ふぁ〜…イイ湯加減だなや…」

足を伸ばして肩まで湯に浸かるアツキからは、ほわんと蕩けた声を上げて湯の温もりを全身で感じ取り、まだ早い時間のお風呂タイムに御満悦。
その間、アツキと交代したヒノケンも雨に濡れ冷えた身体を上書きする様に気持ち熱めのシャワーを浴び、そろそろ湯に入りたいところだろうか。
アツキとしては湯船を独り占めしたいけれど、一緒に入る状況になったのなら仕方がない。
何時もそうしている通り先にヒノケンに湯船の中へ座ってもらって、自分はその上に背中を預ける形で座る事になるだろうなとアツキが思っていると。

「…あれ、オッサン。まだ湯さ入らねンか?」
「髪も何だかんだで雨に濡れちまったからな、どうせ乾かすなら洗ってしまう事にするぜ」
「ふーン……あっ、そだオッサン!」
「何だよ」
「オラがビシッと洗ってやるだ!いっぺン、オッサンの髪洗ってみてなと思ってたンだべ」

ざぱっ!と音を立て湯船から身体を出すアツキ。
先程の恥じらいは既に思い付きの前に失せたのか。
キラキラと目を輝かせて、男性用シャンプーを手に取ろうとしていたヒノケンの事を見る。

「……嬢ちゃんが?」
「ンだ。毎回だったらオッサンの髪サ洗うンは大変だと思うけンど、一回くらいだったらわっしゃわっしゃ泡立たせて洗うの楽しそうだなやと思っとっただ」
「俺の髪はオモチャじゃねぇぞ」
「まーまー、いっからオラに洗わせるべ!」
「やれやれ…ま、そいじゃ頼むとするか」

特に断る理由も無いし、何よりアツキがヤル気満々。
ヒノケンはシャンプーからは手を引っ込め、お風呂場用の椅子に手を伸ばし取って座れば。
湯船から上がったアツキが、広い背の後ろに立つ。

「へへー…何ならオラのシャンプー使ってみンべか」
「…あの香りの嬢ちゃんはキライじゃねぇけどな」
「そうなンか?…ふふー、そげならやっぱりオラのシャンプーで洗ってやるだ。そスたら香りが続いとる間のオッサンはオラのモンだかンな!」
「んな…ちっ。小賢しい事を考えやがる」

嬉々とするアツキに一本取られた思いはするが。
同時にヒノケンには可愛い事を考えてくれるとも感じられて、忌々しい様な感情は湧かず。
自分用として置いているシャンプーを手にしたアツキの事を柔らかに見詰め、開始を待つ。

「ンでまず、お湯を掛けていくだ」
「おう」

気持ち熱めに設定されていたシャワーの温度を少し下げ、熱過ぎずぬる過ぎずの程好い加減にアツキが調整し直したお湯をヒノケンの首から下の髪へ。
指を入れながら満遍なく掛け、燃える赤髪が次第にしんなりと纏まる普段は見ない状態に。
ある程度、毛先までお湯が流し通されると。
今度は頭皮を軽くマッサージしてやりながら頭にもお湯を掛けて、シャンプーの下準備。

「ふー。やっぱス、シャンプー前だけでも髪の量が根本的にオラとは全然違うから、結構なお湯を使って流スてやっただな。…ンでも…よっ、と」

シャワーを一旦、止めたアツキは。
自身が使っているシャンプーを、ポンプから普段よりも一回多くプッシュして手に取り。
先ずはお湯を掛けた時と同じく首より下の髪にシャンプーを行い始め、その長い髪で泡立たせながら洗ってゆくと、すぐに赤髪が真っ白な泡に包まれる。

「おお〜…オラが使う時よりも多めにシャンプー使ったのもあるべけンど…オッサンの髪って、やったらと泡立ちが良いだなや」
「そうか?俺自身じゃ、よく分からねぇけどな」

あまりの泡立ちの良さから楽しくなったのか。
アツキは弾んだ声でヒノケンに話し掛けながら、わしゃわしゃと毛先まで泡立てて洗い。
一通り済むと、軽く追加のシャンプーを手に。

「オッサン、次は頭サ洗ってやっから。シャンプーが入ッツまったら痛いから目ぇ閉じるだ。オラがイイって言うまで開けたら駄目だかンな!」
「了解、リョーカイ」

…わしゃわしゃ…がしがし…

「おっ、イイねぇ。思ったより上手じゃねぇの」
「そ、そうだか?」

ヒノケンとしては自然に出た言葉。
本心でそう思ったから口にしたのだけれど、受け取ったアツキにはヒノケンが思う以上に褒められて嬉しく感じたらしく。照れを含ませた明るい声色。
えへへ、と聞こえそうな笑顔を零れさせ。
指の腹を使って丁寧に洗いあげてゆく。

「えっと…ど、どこか痒いトコとかねぇだ…で、でねくて。痒いトコは御座いませンか〜」
「へっ…何だよ美容院ごっこか」
「べ、別にイイでねぇの。言ってみただけだべ」
「まぁな、カワイイ事をしてんなって思っただけだ」
「…かわっ…そっ、そげなコトをぬかスても、オラ別に嬉スくなンかねっからオッサン!」

明らかに嬉しさを隠しきれない様子のアツキ。
目を閉じているヒノケンからでも明らかで。
軽く口角を上げ、"彼女"の反応を愉しむ。

「けどやっぱり嬢ちゃんは訛りがある方がイイな」
「……ホントだか?」
「ああ、そこまで含めて"嬢ちゃん"だからよ」
「…オッサン…へへ、なら無理に直スたりせンべ」

髪を洗い洗われながらの何気無い会話だけれども。
端々に普段は出さない互いに抱いている想いが散りばめられていて、お風呂効果だろうか。
少なくとも、ヒノケンの言葉にアツキは湯船に浸かった時の様な…気持ちが解けてゆく温かさで、全身がほっこりと包まれる心地。

「…よっス、シャンプーはこげなモンで良いべ」

にこにこしながらヒノケンの髪を洗い終えたアツキは、泡まみれになった手から軽く泡を落とすと、止めていたシャワーから再びお湯を出そうとしたところ。
まだ素直に目を閉じているヒノケンが視界に入る。
泡泡の頭で、とても無防備で。
何だか可愛らしく思えて───つい。

「…?…おい嬢ちゃん、まだ流さ…」

……ちゅうっ……

───…キュッ、シャアアァァアアッ…

「いよース、どンどン洗い流スてやンべかな!」
「〜〜〜…っ…風呂から上がったら、たっぷり今のお返しをしてやるからな。嬢ちゃんよ」
「えー?オラが何かスただか?ちゅうか、シャワーの音で何言ってるか聞こえねぇだ!」

柔らかく重ねられた感触が幻な筈がないし。
アツキの誤魔化し方も、全くなっていなくて。
嗚呼、まったく。この嬢ちゃんは。
赤髪をアツキの指で繰り返し梳かれつつ泡を流し落とされるに浸りながら、ヒノケンは先程の愛しいアツキの口唇の熱を反芻していた。

───…

…わっしわっし…ぎゅっ、ぎゅ…

「うわぁ〜…オッサンの髪、普通のタオルだとスぐビシャビシャになッツまうでねか。髪専用にマイクロファイバーのバスタオルでも買うべオッサン」
「そういう買い物は嬢ちゃんに任せるぜ」
「ンで、次の休みに二人で選ぶだ!」
「次の休みか。そうだな…大丈夫な筈だ」

ヒノケンの髪から泡を総て洗い流し。
アツキも髪を洗ったり身体を洗いっこして、二人揃ってホコホコとした湯上がり良い気分。
もう今日は出掛けずに過ごす事からパジャマを着てしまって、乾かすのが早いアツキからドライヤーを使い髪を乾かし終えると次はヒノケンの番。
ドライヤーを手渡そうとしたのだが、今日のアツキはどうやらヒノケンの髪のお世話をしたいらしく、折角だから乾かすのも自分がやると言い出した事から。
まずは水が垂れない様、髪に被せていたヒノケンのバスタオルを手にして更に水分を吸収させようとしたのだが、あっという間にビシャビシャになってしまい。
呆れ混じりに別のタオルを出す事になったけれども、「次」の休日の約束が出来る流れになり、悪くは思わず寧ろ喜びを滲ませた表情。

…ごしごし…っ…

「こげなトコかな、ンでドライヤー掛けるだ」

…カチッ…ゴォォォー…ッ…

長い赤髪を乾かすのに掛かる時間はアツキより長く。
じっくりとドライしてゆくと、次第に乾いてきたヒノケンの髪からはアツキと同じシャンプーの香りがふんわりと漂い、赤髪は炎の如きを取り戻して。

「(…なンかオラの髪よりツヤッツヤになっとる…)」

同じシャンプーを使った筈なのに、何故だか何時もの自分の仕上がり具合よりも上々な出来になりそうな事に、ちょっとアツキは複雑になるが。
乾いた赤髪の指通りの良さを感じ取ると、自分の洗い方がそれだけ良かったのだと前向きに考える事にして、頭をワシワシ撫でつつ乾かしてゆく。

わっしゃわっしゃ…ゴォー…

「ん〜…悪くねぇモンだな」
「(…オッサン、自然と目ぇ閉じとる…ンか?)」

ふと、ドライヤーを続けながらヒノケンの顔を覗き見たアツキは、シャンプーの時の様に目を閉じて───とても、気持ちが好さそうにしており。
その表情を見たアツキは、ちょっと驚きつつ。
けれど、何だか大きなワンちゃんみたいで。
くすりと笑みを零して前髪から毛先までドライヤーを施し、漸く全体的に乾いたところでドライヤーを止め、大型犬のブラッシング気分で髪を整える。

…シャッ、シャッ…スッ、スッ…

「ン、これで良(い)っかな。終わっただオッサン!」
「おう、ありがとよ嬢ちゃん」
「…ちょっ…わ、えっ…オッサン…」

アツキの美容院に、ヒノケンも満更ではない様子。
乾かしてもらう為に座っていたが立ち上がり、アツキの方に振り返るとすぐさま抱き寄せ。
まだお風呂の余韻が残る身体同士の熱が行き交う。

「ちゃんと、お礼をしてやらねぇとな」
「えっ…」
「シャンプーの時に不意打ちのキスなんてしてきやがったお返しもたっぷり含めて、な。風呂場でそう言ったのちゃんと聞こえてたんだろ?」
「あ…う、お、オラはそげなの聞いて…」

塞がれ途切れるアツキの言葉。
数度の軽いキスと、深い深いキスを幾つも贈られて。
このままだと───また、お風呂に入り直す事になるんだろうなと、アツキは湯上がりの熱とは別の火照りが生じているのを身体に感じて予感する。
ヒノケンの身体を抱き締め返すと指先には赤髪、学園の時とは違い一つ結びされていない洗い立てのその髪を指に絡め弄びながら。
そうだ、今度の買い物では。
湯上がりのヒノケン用に、ワンちゃん柄のシュシュもコッソリ買ってやろうと決めていた。

■END■

◆仲良しバスタイムなヒノアツ♀でした。
お風呂シチュだと、やっぱりえっちなお話にしたくなりますが…前に書いたのは再燃前の時だし、今お風呂えっちを書いてみても良かったけれど。
今回は、えっち抜きでお題ガチャの結果から。

・推しカプお風呂ガチャ
https://odaibako.net/gacha/5781

アツキに頭を洗って貰うケンイチ。「シャンプー入ると痛いから目開けちゃ駄目だよ!」と言われて大人しく目を閉じて洗われていると、チュと唇にキスされた。シャンプー流して貰ったらいっぱいお返しした。

お風呂上がりにケンイチにドライヤーをかけてあげるアツキ。ケンイチが自分に頭をワシワシ撫でられて、気持ちよさそうにしてるのが大きいワンちゃんみたいで可愛いんだって。

主にこちらの2結果で書いてみました(*´ω`*)
お風呂シチュのガチャ結果は他にも魅力的なモノがあったので、また小ネタとして書いたりするかもしれないです。お風呂えっちも(小声)

2022.04.24 了
clap!

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