【Rockman.EXEA】
生理中の彼女@A
)タイトル通り生理絡みのお話2本



「……ゴメンなオッサン」
「…ンな素直に謝ったりするんじゃねぇよ。調子が狂っちまうだろ、気にするんじゃねぇ」
「だけンと…オラ…こげにキツくなると思わねくて」
「…気にすんな、つってるだろ」

ぐっ、と。
ソファに並び座るアツキの肩に腕を回し、有無を言わさず自分の方に抱き寄せるヒノケン。
何時もの強引な様で…何処か、困惑している様な。
そんな思いがアツキを寄せる腕には見える。
ヒノケンの家を訪れたアツキは最初、普段と変わらぬ様子で居てやり取りしていたのだが。
徐々に元気が失われていくのを感じ取ったヒノケンがアツキに具合が悪いのかと問うと、すぐには話すのを躊躇った様子を見せたけれども。
ポツリ、生理が来ていると小声で告げられ。
状態を理解したヒノケンは、しかし理解したところでどうしたら良いのか、という心境。

「……イツツ…」
「…薬とか無ぇのか?」
「オラ、どっちかっちゅうたら軽く済ンでたかンな…薬ば飲まンでも平気だったから、常備とかスてねンだべ。…念の為、準備スとけば良かっただな」

恐らくだが、これまでにもアツキがヒノケンの家を訪れている際に生理中の時はあった筈。
しかしアツキの言う通り、そこまで重い症状が現れない体質だった為に、アツキにとってもヒノケンにとってもこの体調不良具合は初めてで。
お互いが、どうにも落ち着かぬ空気の中。

……スリ、スリ……

「…ン…ふ…オッサン…は、あったけぇべ…」
「…おい、嬢ちゃん…?」
「カイロみてだ。あったけぇと…少しマシになるだ」
「それは…良いんだけどよ」

ヒノケンに抱き寄せられた腕にも抗わず、くてんとして珍しく大人しいアツキだったが。
不意にスリスリとヒノケンの胸元に顔を擦り寄せ。
その何時も熱っぽく感じられる逞しい身体から、じんわりとした熱を得て生理痛を和らげようという行為で、猫の様だとヒノケンは初め思ったけれど。…何処か、様子が異なって。
スンスンと軽く鼻を鳴らしてヒノケンの匂いを求め、話す声の端々には混じる甘い吐息。
───性的な欲求を伴っているのだ、と。

「…オッサン、そンの…オラ、えっち…な気分で…」
「ソイツは分かる。…だけど終わってからだ」
ぅ〜…オラが恥ずかスぃの我慢スて打ち明けたっちゅうのに、断るンだかオッサン…」
「ストロベリーセックスの趣味は無ぇよ」

恥ずかしさと欲情の半々でヒノケンの胸元に顔を埋めるアツキの事は、ヒノケンとしても欲を掻き立てられ行為に及びたい衝動に駆られる。
けれど仕舞い込んだ、そのココロには───

「…生理中のえっちの事、そう呼ぶンだなや」
「…ちっ…余計な事を覚えんな、さっさと忘れろ」
「ふーンだ…オッサンが言い出スたンでねか」

言いながらアツキはキュッとヒノケンの服を掴む。
行為を強請る様にも見えるが、アツキ自身でも今の状態でのセックスは好ましくないと理解しており、欲情を堪える為に縋る気持ちからだろう。
"心配"したヒノケンのココロが伝わったから。

「(……俺が……心配する、なんてな)」

誰かの身を案じるとか労るといったココロを取り戻した事にヒノケン自身がまだ慣れず、何時もよりも小さく見えるアツキに向けている思いが…"心配"だと気付き、不思議な感覚に。
けれどアツキにも心配が伝わった様子から、ヒノケンは何か安堵した想いも芽生えさせて。

「…オッサン、手…貸すだ」
「手?…構わねぇけどよ。どうすんだ」
「…オラのお腹、擦ってほスィ…だ…」
「……こう、か?」

そっ…さすさす…なで、なで…

「…へへ…お腹ば触らせンのは、ちっと照れるけンと…あったけぇオッサンの手で撫でてもらえっと、もっと楽になる気がスるべ。…"手当て"っちゅうンは本当なンだべな、きっと」
「…そうかよ。和らぐんなら…イイけどな」

どんな加減で擦ってやれば良いのか、躊躇いがちに。
だけれどアツキの痛みを和らげてやりたいと、肩を寄せるとは逆の手で可能な限り優しくヒノケンがアツキのお腹を擦ってやれば。
弱気な表情に、ほんのりと笑みが零れ…手からゆるゆる広がる熱が心地好さそうなアツキ。

「(…"来てる"って事は、ココにはまだ)」

痛みを落ち着かせようとして擦る中。
ヒノケンは、今まであまりアツキのお腹をこうして撫で擦る機会は無かった事に加えて、今のアツキの身体に起きている事から───ふと、想う。
男女としての情交の先は、二人には…まだ早い。
自分が制さなければと、柄にも無く刻む戒め。

───アツキを心配するのは。
アツキの事が、どうしようもなく大切だから。

「…嬢ちゃん」
「ン…何だべ?オッサン」
「また辛くなったら遠慮せずにすぐ言えよ、いいな」
「……うン。…あンがと、ケンイチ」

ヒノケンなりの精一杯の言い方。
それでもアツキには充分、自分のお腹を擦り続けるヒノケンの手に自分の手を静かに重ね。
幸せそうに双眸を細めて互いの熱を行き来させた。

■END■

・生理中の彼女
https://odaibako.net/gacha/5555

2022.04.24 了



〜〜〜ン……」
「……何だ。今回も、ちょっと重いのかよ」
「…前に酷かった時ほどでは無(ね)ぇけンど。……あン時のお陰で、オッサンに変に隠したり遠慮スねくて良(い)くなったから、こうスてるンだべ」
「ふぅん、成る程な」

言いながら、ヒノケンの家のソファで少々くったりした様子でいるアツキの隣に座るヒノケン。どうやらアツキは今月の生理が来ている模様。
しかし前に最中である事を告白してきた時に比べれば、基本的に重い体質ではないアツキからすると今まで通りの症状といった程度なのは見て取れ。
ヒノケンもその辺りの理解が及んでいるらしく、気遣う声は掛けたがアツキの返答が想定内だった事から比較的、淡白な言い方をしている。
とはいえ、前にアツキ自身でも予定外の重さの生理中にヒノケンと会い、こうした話をオープンに出来る切っ掛けがあったからこそ、今のアツキは無理せず曝け出しているとも言え。
そこもヒノケンは理解しており、症状が軽いのであれば気に掛けない等とは思っておらず。
アツキの隣に座ったのは。

「……腹、さすってやるか?」

"手当て"というのは本当で楽になる、そうアツキが言ってくれた事を忘れてはいないから。
また、あの、少し恥ずかしそうにしながらも感謝を口にして笑むアツキが見たい、そうした下心も混じりはするが根本としてアツキを心配しての事。
アツキの返事を待たず、手を伸ばす───が。

…とさり……すりすり…

「ンー…今日は、こげな気分だなや」
「…おいおい。しょうがねぇ嬢ちゃんだな」

お腹をさすられる前にアツキはヒノケンの太腿の上に倒れ込み、ころんと転がり収まって。
行き場を失ったヒノケンの手を静かに取って自分の頬に宛てさせると、頬擦りをしてくる。
ヒノケンからすれば前回の一件以来アツキのお腹をさする感触に目覚めており、心配しながら痛みを和らげてやりつつ、堂々と触れるチャンスが潰れたが。
頬の感触も悪くはない。
呆れた口ぶりをしながらも、ヒノケンに浮かぶ笑み。

…くしゃ…なでなで…なで…

「頭痛なんかも、あったりすんのか?」
「ン…ちっとだけ…だから、そげに撫でてもらえっと痛いの飛んでくだ…へへ…オッサン…」

片手はアツキに奪われてしまったけれど。
残る手で、そっと膝上のアツキの頭を撫で始め。
腹痛の他に頭痛なども伴うと聞いた事を思い出したヒノケンが、その辺りを簡潔に問い掛けてみると、鈍いようだが痛みの症状は出ていたらしく。
しかしヒノケンに頭を撫でてもらえた事で、お腹をさすってもらえた時と同じく痛みは軽減されている旨をアツキはポソリと照れながらも伝え。
頬擦りしているヒノケンの手に、キスかどうか曖昧なくらいの瞬間、口唇を触れさせると。
スンスンとちいさく鼻を慣らしてヒノケンを確かめる様な仕草、なんだか見ていてそれは。

「猫みたいな嬢ちゃんだな」

自然と出た感想。
まるで猫が膝上に乗り、構って欲しそうな様子。
猫だと思えば、多少の好き勝手は許してやれる。
もしかして猫耳でも生えているんじゃないか?と、アツキの頭を撫でながら探してみたり。

…ぎゅーっ…

「…おい、何をヒトの手をつねってやがる」

不意に、頬擦りする動きが止まった。
かと思うとアツキがヒノケンの手の甲をつねり出し。
別段ヒノケンからすれば痛い訳ではないが、急な反抗に何のつもりかと機嫌の良さから一転して咎めた口調に変わり。アツキの顔を覗き込む…と。
そこには不服そうに唇を尖らせたアツキ。
不覚だが、これはコレで───

「オラは猫なんかでねぇだ」
「…へぇ、じゃあ何なんだ?」
「オッサンの。……ケンイチの彼女、だかンな」

そんな異議を唱えてきたものだから。
思わず覗き込んだヒノケンの表情は綻び、ニヤけてしまいそうになったのを何とか堪え。
僅かに瞳を細め笑み、拗ねる彼女を見詰める眼差し。
どうしようかと想う程、優しく愛しく。

「俺の彼女は可愛いな。ま、このヒノケン様の彼女なんだから、可愛いのは当然だけどよ」
「…オッサン前から思っとったけンど、ファイアマンとかにも"ヒノケン様"とか呼ばせたり自分で言ったりスるでねぇだ。これだからオッサンは」
「うるせぇ、良いだろが別に」
「オラが聞いてて、こっ恥ずかスィからだべ」
「ああ、ったく。具合が悪いんだから大人しくしていやがれ。…これで、少し黙ってろよ」
「ちょっ…オッサ…」

強気な彼女は、少しだけ弱っていても減らず口。
だから、これで静かになればいい。
そうっと重ねた口唇。
愛しい彼女を黙らせて、痛みが和らぐ事を願って。

■END■

・生理中の彼女
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2022.07.30 了
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