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「#幼馴染」のBL小説を読む
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02
 数秒間の【星空鑑賞】が終われば、「くーちゃん、今日はなに?」と瞳を輝かせる。「今日はね――っと」と危うく滑らせかけた口はすんでのところで止まり、「その前に」と紅美は立ち上がる。「ありがとう」という言葉とともに。それを聞いたつむぎはといえば、へらりと笑みを返した。

「どういたしまして! それでさ、今日はなに作ってきたの?」
「つむぎ、この場所では食べさせないわよ。ちゃんと座りなさい」
「うへーい」

 つむぎは立ち上がった紅美に「はい、座る」と促されるまま、イスへと腰を下ろす。丸型ソファーの横に設置された机がふたつ向き合った片方にだ。残った方に紅美が座り、「今日はマドレーヌね。プレーンとチョコレートがけ」と肩から提げたままの通学バッグからトレーをふたつと使いかけのウェットティッシュを取り出す。どちらも放課後まで生徒会室に置かれた冷蔵庫で冷やされていた。

「マドレーヌ好きー」

 ウェットティッシュで手を拭いたつむぎは、さっそくとでも言うようにトレーのふたを開け、黄金色のマドレーヌに手を伸ばす。チョコレートがけではなく、プレーンであった。

 ひとくちかじったつむぎは「おいし〜」と幸せそうな顔をしながら残りを食べていく。紅美の作るお菓子はいつもおいしい。もちろん、お菓子だけではなくご飯も別格だ。

 魔法使いと言われたつむぎだが、紅美だって魔法の手を持っていると思う。そう言った紅美との出会いは、おそらく一歳にも満たないころだろう。母親同士が親友であり、行ったり来たりは子供が産まれてからも続いていただけだ。それで仲よくならないのなら、もはや相性の問題であろう。しかしつむぎと紅美は、幼なじみ兼親友という立場になった。失敗したときには補う、持ちつ持たれつの関係性に。そう――母たちと似た関係にたどり着いたのだ。

 幼きつむぎが自身に宿る【能力】を知ったのは、母親がケガをしたときである。料理中の小さな傷――にんじんの皮を向いていた包丁がすべって中指を裂いた――に、つむぎは「おかーさんらいじょぶ!?」と駆け寄った。少々舌ったらずになってしまったのは、母の「いたっ!」の声に混乱したからで。

「これぐらいなら大丈夫よー。ほら、危ないから離れてー」
「ダメー! 消毒するの!」
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