01
プロローグ
襲撃者と相討ちとなったのち、庇った背中がぐらつく。と同時に振り返った顔が、その青い瞳が細められたのを見た。見たというよりかは、見上げていたといった方が正しい。
私はただただひたすらに、我が家――伯爵家長女たる私につけられた護衛騎士を見上げていた。
成人となるこの晴れた日――今日は私の十八の誕生日。しかし終わりごろになるとともに、どこからともなく襲撃された。これが巷を騒がしていたらしい強盗団だというのは解っている。そのように説明があったのだから。
いわば、この誕生日会は囮なのだ。伯爵家当主、王国騎士団第一部隊隊長たる父上の策である。これ以上の被害が出ないようにという。
私の護衛騎士と強盗団団長の魔法が互角なのには驚いたが、件の団長は素行の悪さに騎士団を退団させられた男であったようだ。
なるほど。父上が止めたがるわけだ。騎士団としての醜聞に関わってくるのだから。
捕まえた男がどうなろうと私の知るところではないと、微塵も興味が湧かなかったのは面識がなかったからだろう。
だから私の興味はいま、護衛騎士にしか向いていない。血を吐いた彼は、「お嬢、様」と膝をついた私の頬を撫で始める。
――伝う涙を拭うように。
「私は、あなたの心の、なかに……」
いつでもいます。
最後に笑みを浮かべた彼は――私の初恋の人。
だから私は、彼の魂を――。
これは償いの話である。彼の人生を歪めてしまった私の償いの話。
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