朝を迎えた。誰も来ない、寂しい朝だ。母さんが朝ご飯ができたという声を拾って、リビングに下りて朝ご飯を食べる。向かいでおかずをつまんで待ってるやつがいなくて、泣きそうになった。
 相変わらず遅刻しそうな時間に、教室に入る。あいつは女の子に囲まれ、何やらいろいろ話していた。ポンポンと背中を叩かれ、振り向いたら、金髪に蒼い瞳が俺の視界に派手な彩色をする。

「おっす」
「コロネロ、おはよ」

 告白された側、告白してふられた側。複雑な関係だったけど、友達でいてくれよという言葉で、いろいろ救われた。コロネロは、あいつを見てため息を吐く。

「相変わらず、モテモテだよな。コラ」
「一応、紳士的だし。仕方ないだろ」
「うぜぇけど、良いやつだからな、コラ」

 コロネロも、あいつを認めている。普段はしごいたり、キツい言葉を言うが、やるときはやる。そんな男気溢れるところが、気に入っているらしい。
 続いて教室に入ってきたスカルも、あいつを見てため息を吐く。あいつは周りから幸せを吸い取って、生きているらしい。

「おう、スカルじゃねえか」
「コロネロ先輩にツナさん、おはようございます」
「おはよ、スカル。このメンバーってことはバンド?」
「ええ、ちょっとアレンジの相談を」

 でも、無理そうですねえ。そういうスカルの言葉に、俺とコロネロは同意した。
 あいつは一度囲まれると、昼休みまで逃げられないのだ。こればっかりは仕方ない。モテるとは大変なのだ。また、ため息を吐きつつ、メールをしとけばと妥協案を出す。そうします、とスカルはメールを打った。
 そのまま男三人でだべっていると、先生が教室に来て一日が始まった。学年が下のスカルは自分の教室に戻り、コロネロと席に着く。適当に出席をとった後は、先生はすぐいなくなった。
 授業は相変わらずつまんない呪文みたいだった。ちょっとは教えてもらって理解していたけど、その内容も何故か霞んでいてよく分からないままだった。休み時間はコロネロと一緒にいるようにした。あいつに睨まれた気がしたけど、好きな人がいるなら俺とべったりするのはおかしい。コロネロに尋ねられたとき、俺はそう答えた。
 沢田、と当てられるたびに、俺は助けを求めあいつを見そうになった。ダメダメ、と言い聞かせて、獄寺君の方を見て先生に答える。そんなことを繰り返して、昼休みがきた。

「ツナ、昼だぜ。コラ!」
「ツナさん、食べましょう」
「コロネロ、スカル。うん、食べよ」

 ああ、あいつも一緒に、と思ってあいつを見ると、あいつの席には誰もいない。あれ?と思って二人を見ると、二人もおんなじ顔をしていた。どうやら、二人もらしい。

「リボーンが、いない」

 ぽつんと呟いた俺に、可愛いマドンナの京子ちゃんが答えてくれた。

「リボーン君なら、屋上だよ」
「へ?」
「なんか、女の子から呼び出しされたんだって」
「そか、ありがと」
「どういたしまして」

 そう、呼び出しされたの。そのまま、付き合っちゃうんだろうな。きっと、あいつのアプローチに気付いて、惚れちゃって、告白。
 話からして屋上でご飯は食べられないと悟り、開いてる机を拝借して三人でお昼を食べる。
 コロネロは自分でお昼を作っているらしく、とても美味しそうなお弁当を広げていた。スカルは購買で買った焼きそばパン。俺は、料理好きな母さんが作ったお弁当。いつもなら、ここにコロネロ以上に素晴らしい自作のお弁当を広げているやつがいたが、あいつは青春しているのでここにはいない。またため息を吐いた。

「はあ」
「ため息ばっかりだな、コラ」
「元気ないですね。ツナさん」
「はは、ちょっとね」

 そのちょっとがちょっとじゃないから、ため息を吐くんだけど、こればっかりは吐き出せない。あいつを困らせたくないのだ。駄目ツナと呼ばれるけど、すっごい卑怯者だったりするけど、幼馴染くらい笑顔で送り出させて欲しいから。

「ツナさん。ツナさんの悩んでることは分かんないですけど、俺はツナさんにもっと我が儘言って欲しいです」
「へ? スカル?」
「その通りだぜ、コラ」
「コロネロ?」
「ツナさんは、リボーン先輩にしごかれて、俺が泣き言言って貶しても、結局慰めつつ先輩を褒めてますし」
「俺が友達でいてくれって我が儘も聞いてくれたしな、コラ」
「って、何してんですかコロネロ先輩!」
「うるせえ! 悪いかコラ!」

 いつになく真剣だったのに、喧嘩になってしまった。この二人は仲が良いのに、なんでこう喧嘩してしまうのか。勝者と敗者が決まってるのだから、スカルがつっかからなきゃ怪我しないのになあ。
 それでも、二人が俺を心配していることは分かって、俺は二人にお礼を言った。きょとんと並ぶ顔が、まるで兄弟に見えたと言ったら、二人はどんな反応をするだろう。

「あ、チャイム」
「ちっ。決着は放課後だコラ」
「望むところです!」

 すっかり空になったお弁当箱をまとめて、また教室に戻った。

「あれ?」
「どーしたんだコラ? って、あ?」
「ね。いない」
「いねえな」

 そう、いない。あいつがいない。なんだ。彼女と抜け出してデートにでも行ったんだろうか。いや、そんなことは、ないはず。あいつは真面目だから、サボりはしないはずだった。おかしいなあ。コロネロもそう思ったらしく、首を傾げている。





 




「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -