蛙の子は蛙

 今日は、いい夫婦の日らしく。何故かくそがつくほど忙しいはずの父親が、母さんと朝からイチャイチャラブラブ。食卓に並ぶ大量の料理、俺の部屋に並ぶ銃火器、全く何でこんなことになるんだろうか。遠い目をしていると、家庭教師も隣で同じ顔をしていた。だよなあ。
 飯食った?と聞いた。とりあえずは、と帰ってきた。お前は?と聞かれた。俺も同じ感じ、と返した。とにかく目に毒なラブラブっぷりに、俺は出かけると言った。俺もついてく、と言われた。

「はあ。全くどんだけだよあの人たち……」
「まあ、普段会えないにしてもあれは、な」

 流石のリボーンもあのラブラブは堪えるものがあったらしい。大好きなエスプレッソを飲みつつ、父さんの愚痴を零していた。仕事はやるが、話題は常にお前とママンで煩いとか、時々ドジを踏むだとか、そこは父親から引き継いだんじゃねえかお前、と展開。まさかダメ親父と考えていたら、ダメは父親譲り疑惑が浮かぶとは。大人しく聞き流せなくなって、ちょっと喧嘩。リボーンを置いて山本の家に逃げた。
 山本のお父さんと山本は暖かく迎えてくれて、まあまあとあったかい緑茶を出してくれた。優しい。その優しさで溶かしてくれ、なんてバカみたいなことを言いそうになった。ぐちぐちぐち、気付いたら普段の不満やらなんやらをぶちまけていた。

「リボーンったらいつも意地悪でさ! 早く帰ってこいって言わせたいがために、わざとゆっくり帰って心配させて! そしたらドジって怪我してくるんだよ!?」
「それはいけないのな……」
「手当してやったのに、下手くそだの手際悪いだの。オメーがキスすれば治るぞ、とか……せっかく心配したのになんなんだよ!」
「それは、まあな」
「お菓子作ってやっても、食べるだけ食べて微妙だっただの、あれが足りなかっただの……なんだよ。俺だって、俺だって、がんば……って」
「つ、ツナ? おい、泣くなって……よしよし」

 愚痴っているうちに悲しくなって、泣きだして山本を困らせてしまった。泣き止まなければ、と思うが止まらなくて、よしよしと頭を撫でてもらっているのに考えているのはリボーンのことで。
 泣き止んだころには、ああ、自分が悪くて喧嘩してたんだっけと思い出した。山本と山本のお父さんにお礼を言って、リボーンの大好きなエスプレッソを買って、家に帰る。珍しくリボーンがリビングにいて、酔って寝てしまった父さんと、ではなく母さんと家事をしていた。
 俺を見ると、リボーンは家事を止めて一緒に部屋に入った。

「……ただいま、リボーン」
「おかえり、だな」
「その、ごめんね。勝手に怒って。これ、あげる」

 買ってきたエスプレッソをエスプレッソを渡す。リボーンはそれを嬉しそうに受け取った。

「俺も悪かったな。ケーキ焼いたから、後で食べないか?」
「……食べる」

 お互い似たようなことをしていて、笑った。ああもう、こんなんだから嫌えないんだ。ぎゅうっとまだ自分より小さい体を抱きしめて、体温を確かめる。さんざん確かめて解放したら、そこにはちょっと不機嫌そうなリボーン。
 そんなとこも笑顔になってしまう元で、彼を肩に乗せて、まずは焼いたケーキについて聞く。それが、将来は逆になりそうだなあ、なんて思った。意外と、悪くないなと思ってケーキをつつきながら見たカレンダーの日付に、こりゃずっと一緒かもしれないな、とまた笑った。


___11/22
 つまりは、愛しちゃってるんだよね。

2011/11/22 睦月拝




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