かわいいやつめ2
スレたボスと忠犬獄寺
ボスの失恋編
ちょっとしたことだったんだ。ただ、それがタイミング悪くて、まさか気付いていたとは知らなくて、思わず屋上まで逃避行してしまった。
「は、っは」
「じゅ、10代目!」
そんな、と思って振り返って見れば、相変わらず察しの良い忠犬だ。汗をかいてるから、必死に本気で走る俺を追いかけてたんだろう。
こいつは、裏切りそうにないなあと思った。
「……10代、目」
そばに駆け寄ってきて、彼は目を潤ませていた。
「ご、くでら……はは。格好悪いとこ、見せたな」
失恋したショックで本気で走るだなんて、ついでに涙も零して、顔だって酷いだろうよ。幸せそうに俺に報告してきたあの人は、ずっと見てたから分かる良い笑顔で。
「……くっ、う」
色々と張り裂けそうだ。
「いいえ、安心しましたよ」
「っ……は?」
「人の子なんだと、思えます。辛いのなら泣いて当たり前です。あなたは、泣いて良いんです」
随分と失礼だとか、俺が神さまから生まれたとか思ってんのかとかいう言葉は出てこなくて。
ただ、彼の肩を借りて泣いていた。
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ツナだって恋愛経験を積んで、成長するんじゃないかなって思う。