沢田さんデレました
玄関を開けると、まず威勢のいい挨拶が飛んでくる。なんだかんだ慣れてしまった習慣だ。
「10代目、おはようございます!」
「おはよう。しとぴっちゃんはいいの?」
「しとぴっちゃんなら、僕が先に学校に行かせたよ」
横からにょきっと現れたのは、エンマ君だ。赤い髪が整っているから、きっとアーデルハイトが付き添ってたんだろう。
「わ! エンマ君おはよ」
「おはよう……ツナ君」
「……っ10代目、行きましょう!」
言い聞かせたおかげで、獄寺君とエンマ君は近くにいても平気になった。獄寺君は大分、我慢しているようだけど。
学校に着いて、山本とやっぱりじゃれあい、授業中は何か懸命に考え事をしていた。先生に噛みついてないから、彼なりに折り合いをつけてくれたようだ。
昼休み、どうしても大所帯になるオレたちは、屋上にいた。
「でな。そこでバビューンとズババでザザーっと!」
「うむ、それは極限素晴らしいな!」
「あそこ新作のケーキがね」
「京子、よく太らないわね……」
「ツナ君、ほら絆創膏」
「あはは。ありがとうエンマ君」
「10代目、俺だって持ってたんですよ」
賑やか過ぎて何がなんだか、という感じだが、こうして騒ぐのは楽しい。
一人ひとり、こんなに違うことを知らなかった。慕ってもらえることが、こんなに嬉しいって知らなかった。だから。
「ありがとね、獄寺君」
こうして時々しかありがとうを言えないオレを、見捨てないでね。
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獄寺君は、見捨てないでねなんて言われたらすごいことになりそうですよねー。