かわいいやつめ
スレたボスと獄寺。


「帰りたいな」
 屋上でポツリ、呟く。まあ、呟くだけで帰らない。出席できるうちはできるだけ授業を受けないと、いつ戦いに巻き込まれるか分からない。

「10代目、なら鞄をお持ちします」
 その呟きを拾った自称右腕は、にかっと笑い言う。いや、駄目だろ。

「いや、しなくていい。ってか、そこは咎めるとこだからね」

「しかし」

「あのね、獄寺くん。オレの話何でもはいはい言ってちゃダメ。それは右腕じゃないから」
 何でも肯定するとか、意思がない人形みたいで嫌だ。右腕ってのは、ボスを律する存在で、って感じじゃない?

「う、すみません……」

「ちゃんと叱るとき叱ってくれなきゃ、俺は逃げるよ」

「逃げる、ですか」

「うん。逃げるよ」

 継ぎたくないもん。

「それは、困りますね。俺も連れてってもらわないと」

「は?」
 何、言ってんの。さっきの話聞いてたのかなこの人。

「俺は、10代目が10代目だから仕えてるんじゃねぇんで。10代目が沢田綱吉さんって人だから、仕えてるんっスよ」

「……困った忠犬だね」
 バカだねこの人。俺に、そこまで入れ込むなんてさ。

「それが俺ですから!」

「はは。じゃー五時間目いくよ」

「はいっ」

 そんな君だから、傍にいることを許してしまったんだよね。


___
 時が経つにつれ、彼は彼なりに忠誠心の意味を知っていくんです。





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