02


「何で雲雀のとこ」
「黙れ。お前が騒ぐと鳥が鳴く」

 昼休み、応接室へと続く廊下。そこであまりに変貌した主人の言動に、獄寺は絶句した。高圧的、というような生ぬるいものじゃなく、支配者がもつ絶対的覇気を放つ主人が、目の前にいる。なんということか!状況把握に頭がついていかず、獄寺はその主人においていかれていることにも気づいていない。
 都合よく黙った従者を放置し、綱吉は応接室の扉を荒々しく開けた。それはもう、バシンと音がするくらい。

「こんにちは!まさかとは思いますが寝てませんよね、恭くん」
「喧嘩売りに来たのかい。綱吉!」
 いいや、綱吉は喧嘩など売っているつもりはない。これはからかっているのだ。
「まさか! ダメツナが並盛最恐の雲雀恭弥に喧嘩? 寝言は寝てから聞いてあげますよ。恭くん」
「やっぱり売ってるんじゃないの!?」
「ワォ、恭くんがツッコミなんて!」
 思わずツッコミに回ってしまうほど振り回したのはそっちじゃない。と、雲雀は文句を言ってから綱吉にソファーを勧めた。

「あ、いつもありがとうございます。草壁さん」
「いえ。ごゆっくりどうぞ」

 向かい合わせに座ると、どこからともなく草壁が二人の前にそれぞれ飲み物を置いた。草壁が応接室から出たのを確認してから、雲雀は乗り込んできた客人に尋ねる。

「今日はどうしたわけ? ここではそれタブーだったんじゃないの」
「べっつに。いいじゃん幼馴染なんだし」
 綱吉は、この並盛最恐の雲雀と幼馴染。しかも、仲が良かった。しかし、あの家庭教師が来てから他人のふりを突き通していたのだが。入口であんな大声で呼ぶなんて、ばれても構わないのか。
「僕は構わないけどね。で、そろそろあの犬も入れてあげなよ。見苦しいから」
 雲雀が入口に目線をやると、綱吉もつられて目線を辿る。そこには、エサをお預けされた犬のように扉に張りついている獄寺がいた。幼馴染の勧めもあり、綱吉は獄寺を応接室に招き入れた。

「恭弥ぁ。俺さ、ちょっと自分でお勉強したいんだよ」
「へぇ。協力の報酬は?」
 この二人の中では、いろいろと話が端折られるようだ。つまり、授業に出ずここで一人で勉強させろと綱吉は言ったのだ。それに対する報酬を、雲雀は要求した。少し考え、綱吉は口を開いた。
「俺と幼馴染ってのを公言してもいい。あと、手合せもたまに付き合う。そうだなー。武と隼人も襲っていい」
「じゅ、じゅじゅじゅ十代目!?」

 獄寺の声を無視して、そしてこの場にいない山本も加え、雲雀のサンドバッグにしても構わないと告げる綱吉。付け加えて、バラしてもいいのは幼馴染っていうことだけ、サンドバッグは時間と場所を弁え同意のもとやることと条件を付けた。

「それぐらいなら守ってあげるよ。丁度、相手が欲しくて堪らなかったところだ」
「なら、交渉成立ですね。明日からここに直で来ますから」
「分かった。草壁にも言っとくよ。あ、ここでダメツナのフリなんかしたら追い出すからね」
「分かってまーす。よし、獄寺君行くよ」

 全く話が見えてこない獄寺は、主人に引きずられながら応接室を後にした。



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