04


 綱吉は考えていた。このままあのボンゴレを継いだとして、元の大きさに戻すことで本当に自分に平和が訪れるのか。世界最強、名を聞いただけで震え上がるマフィアを、自警団の形に戻し世界に訪れるのは本物の平和だろうか。どう考えても答えは「否」だった。最強であるからこそ抑止力たることができる。そのボンゴレが穏健を望むから平和なのだ。それを一度でも継いでしまえば、間違いなく自分は裏の支配者であり続けなければいけない。そんな面倒なことを引き受けてやるつもりは、綱吉には無かった。例えそれが仲間を突き放すことだとしても、自由なままでいたかったのだ。
 幼馴染の恭弥にはバレたが、計画は順調に進んでいた。応接室に入り浸りを始めてひと月、綱吉は恭弥と黒曜に来ていた。黒曜の支配者は綱吉と恭弥の組み合わせに、ただただ目を大きくしていた。

「やあ、骸。体の調子はいかがかな?」
「相変わらずムカつく房を生やしてるんだね君。今すぐ引っこ抜いてやりたいよ」
「恭弥、それはダメだかんな」
「分かってるよ。君に逆らうほど馬鹿になった覚えはない」

 骸は今の状況を嘘だと思いたかった。少し前、何故か久々に外に出れたことに驚きながらも、自分の標的の綱吉を探るため黒曜にいそいそと戻ってきた。また生徒会長をやりながら、並盛を探っていた。それが今日になって、生徒会室に突然現れて仲良く寛いでいる標的と並盛の秩序。何が起きているのか、受け入れることを頭が拒否していた。

「あれ? 骸? おーい」
「もしかして綱吉、説明してないわけ?」
「えー。ちゃんと頼んだよ彼らに」
「あいつらがきちんと説明すんの見たことないよ。僕は」

 それもそうだったか、と綱吉は固まっている骸に簡潔に話す。自分がしようとしていること、それにどんな犠牲が伴うのかということを。話が終わると、骸も大分落ち着いたのか、こちらを真っ直ぐ見据えていた。

「君は、ボンゴレを潰したいのですか?」
「いんや、違うよ。ただ俺はこの忌まわしい椅子に座れるほど、ご立派じゃないってこと。別に、リングの時間軸が歪むというならリングは守りきるし、犠牲も払う。でも、ボスにだけはなりたくないんだ」
「では、君は10代目を迷わず捨てる、と」
「ああ。あんなもん好き者がやってりゃいいさ。推薦書でもなんでも書いてやる。でも、アイツはそれを認めないだろうよ」
「アルコバレーノを出し抜く協力者……クフフ、面白そうな企みごとです」

 一通り確認した骸は、とりあえずお客様ですからと、二人に紅茶を振る舞った。綱吉はそれをがぶ飲みし、恭弥は上品に一口飲んだ。その様子を見て骸は綱吉の前にペットボトルの水を置く。

「気が利くね! 実は喉カラカラでさ」
「そんな喋ってましたっけ?」
「ここに来る前に障害物があったからつい」

 てへっとおちゃらけて笑う綱吉から察した骸は、鍛えておいた生徒会役員たちをもう少し鍛えておくべきかと思った。が、恭弥がすかさず言う。

「安心しな、六道。この子が規格外なだけで、あれは十分強かったよ。僕にとっても玩具だったけどね」
「相変わらず突っかかる上に失礼だよね、恭くん」
「綱吉! その名前で呼ばないでよ!」
「ええー。似合ってると思わない? ねえ、骸」
「え、僕に振らないで下さいよ。っていうか僕協力するって決定なんですか。というか雲雀恭弥! トンファー構えないでくださいよ。ここ生徒会し」

 あらあら、といいながらのらりくらりと二人の攻撃の合間を抜け出し、綱吉は二人にひらひらと手を振った。

「ばいばーい」
「待ちなよ綱吉! 僕のバイクで来たの忘れたの!?」
「僕の話終わってませんよ? 沢田綱吉!」

 廊下を走っていく綱吉を追いかける二人の支配者に、黒曜の生徒たちは見て見ぬふりを決め込んだという。



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