それでも好きなんです許して





 双子、というのは厄介なもので、俺たちはよく似ていた。顔つき、性格、そして、力も。そのためか、ダメコンビだとか言われていたが、最近は友人が増えたおかげかそう呼ぶ人も減った。それでも、俺たちは相変わらずダメコンビだった。
 今日は一緒に帰る予定だったのだが、ツナがヒバリさんの呼び出しで連れて行かれてしまい、待ち続けることもできずに帰宅してしまった。こうなってはツナは一人、不良に絡まれやしないか心配で、課題をやりながらもそわそわしていた。

「おい。綱吉。人の心配ばっかしてんなら、課題増やすか」
「いや、ま、まってよ! だって、なんか今日は特に不安で!」
 そう、なんだか今日は特に不安で仕方ないのだ。
「……なら、俺が迎えに行ってくる。課題進めとけよ」
「ありがとう、リボーン!」

 俺が先ほどからそわそわしていたから、感かもしれないとリボーンは迎えに行くと言ってくれた。白衣のコスプレからいつものスーツに着替えると、リボーンは俺の部屋を出て行った。
 ふわっと、そこで妙に軽くなる不安。きっと、ツナはリボーンが助けてくれるだろう。目の前に積まれた課題に苦笑いしつつ、シャーペンを動かした。

 三十分が経ったころ、ただいまというツナの声が聞こえてきて、シャーペンを放って一階に駆け降りた。予想通り、あちこち傷を増やしたツナが、ソファーに座っていた。

「おかえり、ツナ」
「ただいま、綱吉。ごめんね?」

 ふにゃんと、眉を下げて謝るツナを、ただ抱きしめた。おずおずと背中に手を回してくるツナは、きっと困った顔をしているんだろう。

「もう、心配したなぁ」
 そういってツナを離して、テーブルに置いてあった救急箱を開く。こういうのは早めに治療するから早く治るのだ。
 ティッシュを引っ掴んで、消毒液を片手に傷口の傍に寄せる。ふと視線を上に向けると、ツナの顔がすごいことになっていた。

「ツナ、そんな顔しないでよ」
「だって沁みるじゃん!」
「まあ、しかたないしかたない。ほい」
「いっ! 綱吉ー!」

 遠慮なくブシュっと消毒液をかけると、沁みた痛みで声を上げるツナ。背中を軽く叩かれるが、今は許してあげよう。その痛みは、自分も十分知っているから。
 消毒が終わると、ツナは疲れたと言って自分の部屋にこもった。

「あー。やっぱりか」
「何しても起きねぇからな、あれは」
 銃鳴らしても起きないからね。
「しかたないよねー。あ、寝顔撮りに行かせてよ」
 カメラを構えてリボーンに言う。
「……すぐ戻れよ」

 分かってる、と返事して、ツナの部屋に入ると、そこには何故か起きているツナがいた。カメラを首から下げている俺は、ツナになんといえばいいのだろうか。

「あれ? 綱吉どうしたの?」
 良かった。カメラを気にしてないようだ。このまま話をシフトしてしまおう。
「まだ、寝てなかったの?」
「ちょっと、ね」
「悩み事、かな?」

 バレた。ツナの顔にはそう書いてあった。可愛らしいなあ。そんなことを思いつつ、ツナが横になっているベッドに腰掛けた。 頭をぽんぽんと撫でていると、気持ちよさそうに目を閉じて、ぽつぽつと呟いていく。

「最近、視線を感じて……危険は感じないけど、不安で」
 ぎくっ。
「……うん」
「でも、つなよ……が、いるから」

 やはり疲れていたツナは、それだけ呟いて夢の中へ落ちていく。その寝顔は素晴らしく可愛いものだったが、俺は数回ぽんぽんと撫でたら部屋を後にした。
 自分の部屋に戻ってすぐさま課題を再開した俺に、リボーンがどうしたんだと不思議がっていた。

「まあ、俺はツナが好きなだけだから」
「訳が分かんねえぞ」
「気にしない。気にしない。さ、次教えてよ。やる気になってるうちにさ」
「……そうだな」

 リボーンの授業は相変わらず厳しいまま、俺も誇れる兄貴のまま、それでいい。それでも、好きなんだよ。
 ツナが起きるまで、後三時間。


___end
 今はまだ、気付かないで。

2011/11/20 睦月拝


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