小説 | ナノ




僕のおねえちゃん


※光くんのお兄さんの彼女。
※お兄さんの名前はカケルさん。元ヤン。






「ねーひかるくーんひまなんだけどー」
「俺はヒマやないんで」
「さっきからパソコンやってばっかじゃん。ひきこもり少年め」
「ほっといて下さい。あと俺別にひきこもりやない」
「つれないなーもー」


ソファに座って、さっきから俺にちょっかいを出してくるのはなまえさん。兄貴の彼女。今日は仕事が休みなので、兄貴の仕事が終わるまで家で待ってることにしたらしい。ちなみに両親は一昨日から旅行に行ってて留守。だから今この家には俺となまえさんしかいない。しばらく料理だの掃除だのをしていたなまえさんは、やることがなくなったらしく俺に絡み始めた。うわ、めんどくさ。そう言ってやれば、酷いな、光くんは!なんてぷんすか怒りだすそぶりを見せたけど、ほんまに怒ってるわけやないってのは分かってるから別に気にしない。相手せなあかんのはほんまメンドイんやけど、俺の分まで昼メシ作ってくれたからまあそれで相殺やな。


「健全な青少年なら外で汗を流すとかしなよ。ていうか部活は?」
「残念、今日はオフ」
「デートとかいかないの?」
「そんな暇やないんで」
「パソコンはするのに…」
「ヒマやからパソコンやっとるわけやないっすわ」


へー、とさして興味もなさそうに返事をしたなまえさんは、ごろーんとソファで伸びをしてみせた。別に両親がいないからってわけじゃない。なまえさんは家に来るといっつもこんな感じ。元ヤンの兄貴と、こんな風にへらへら笑っとるなまえさん。まったく正反対のふたりがどうやって恋に落ちたか云々は知らないし、興味もないから聞かない。聞いたら聞いたで一晩中熱く語りそうやし。


「そんなぐうたらしとったら兄貴に嫌われんで」
「大丈夫、カケルは私のこと大好きだから」
「大した自信っすね」
「えへへ」
「別に褒めてませんけど」


でもまあそれは、事実だと思う。どっちかっちゅーと兄貴のほうがなまえさんが好きでしゃあないって感じ。なまえーとかってなっさけない声出していっつもベタベタしとるしな。見ててこっちが暑苦しいから正直迷惑やねんけど、言ったところで何も変わらないって分かってるからもう何も言わない。なまえさんはなまえさんで咎めることもなく、なぁにーなんてへらへらしてたら、どっからどう見たってバカップルすぎてもはや掛ける言葉もない。


「光くん、お腹すいてる?」
「まあまあ」
「そろそろおやつの時間だから作ってあげよっか。いる?」
「いります」


何を、って言わなくてもそれはもうツーカーの合い言葉みたいなもんで、もはや習慣になっとった。それ見て兄貴が「光とばっか仲ええんずるいで!」とかアホみたいなことを言い出してなまえさんが笑うのも、全部。もう俺の日常になってしまっている。例えば、甘いもん別段好きやない俺が初めて食べた白玉善哉がこの人が作ったやつやったとか。絶対言わへんけど、やっぱこの人が作ったのが一番うまいと思ってることとか。絶対言わへんけど。大事やから二回言うたで。



「はい!今日はスペシャルにしてみた!」
「…どんな風の吹きまわしっすか」
「作曲活動がんばってねーってところかな」


いつもより多く白玉の乗った善哉。まぁえっかと思った。これが俺の日常なんやから。それにこの人とは長い付き合いになるやろし。なまえさんの右手の薬指にキラリと光るプラチナの指輪を見ながら、俺はばれないようにこっそり笑った。







(ところであんたが初恋なんやけど、て言うたらどんな顔して笑うんかな、この人)





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