外でたっぷりと雨を纏って来た金色の髪の毛を煌めかせて、憂いも何も映さぬ暗い双眸をした隣の男を見やる。憎いくらいに整った貌は青ざめたように真っ白で、生気が喪われていた。その原因については考えたくない。今日は母の命日だった、でも私は母の墓前には行かなかった。私がしたことはただそれだけだもの。
なのに何故彼はこんなにも憔悴して居るのだろうか。私を愛してくれるのではなかったのだろうか。

涙の代わりに雨垂れが伝う彼の冷たい頬に手を伸ばすと、拒絶するように手首を掴まれた。ブラウスの、湿った袖ごと。

「――泣いていたのか、ひとりで」
「……………」
「あんたの母さんは亡くなっているんだ、如何して姫は――」
「亡くなったからって、想いは消えないでしょう?」
「だがオレは今は姫を、」
「要りません。愛してるだとか、そんな言葉要りません。貴方の行動に全て出ているじゃないですか」

私を置いて母の処に行く。母の処に行かずに何時も通り私の傍に居るという選択肢なんて、彼の中に寸分も無い。

「――それと勘違いしないで。この袖が濡れているのは涙を拭ったからでは無いわ。花瓶の水を替えた時に濡れたのよ」

貴方が行ってしまったあと、泣こうと思ったら泣けなかった。貴方との日々が幸せ過ぎて、いつの間にか泣けなくなっていたの。だから幸せなんて要らない。母の為に泣けない私なんて要らない。貴方に愛して貰えない私なんて、私は要らない。







(2011.04.06)
あい って なに?
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