なみだはでるに任せておくがいい
だれにみせるのでもない
あなたにわかるはずもない
なんにもいらない
ほかにはなんにも
そうはいっても
生きていくのに食べるのはいる
河原で生きていくわけにもいかぬ
それでもおもう
ほかにはなんにもいらない
なんにもいらない
愛と幸福いがい
わたしいらない
ずっとおもってた
そうおもって泣いてた
きがついたけど
愛と幸福は
かなしみもせつなさも憎しみも後悔も
すべてを孕んだ絶対だった
しあわせでいたいだけ
人を愛し愛されて生きていたいだけ
とくべつなことはいらない
なんにもいらない
贅沢もいらない
きんぴかのドレスもキャビアもダイアもとくべつな愛人も
だけど
愛と幸福は
このかなしみとせつなさ
憎しみと後悔を
生きていくこの人生をも
つつんだものだった
あなたがそこにいた
わたしはもうここにいてた
河原で小石を拾って生きていくわけにはいかないけれど
わたし無欲なのよって
平凡な幸せしかいらないのよって
そんな腑抜けたことばを頼りにしても
いくわけにはいかないね
なみだはでるに任せておくがいい
わたしの眠る頬にキスを
神様のキスを
ちいさなこどものような唇と体温で
わたしにキスを。
そして
わたしも我が子のようにあなたをおもう
あなたのいとしい寝顔に
ただキスを。



なみだはでるに任せておくがいい
2023/05/28





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