いてついた指が すこしずつとけていく 人の体温でも 太陽の熱でもなく ただ わたしのなみだが じっくりと 胸をつらぬいていった わたしはわたしをみあやまっていた わたしはわたしをこおりだと思っていた わたしはすべてに期待していなかったから なにもかもが 永遠のようなときを経て変わっていく 草木のように生きる わたしはいまここに落ちたばかりのかたい種子 ひらくかどうかはわたしだけが知っている だれからも置き去りにされた時間のなかで わたしは無謀に生きる 勇敢さはいらない このなみだのぬるさが わたしの最初のゆきとけの水だ
春待つ草2023/02/03
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