きみを愛するときのわたしのこころは
星を映すような海のみなも
暮れゆく日を沈めてゆく凪いだ日のみなも
それでいて月の満ち欠けで潮は満ち引きし
大気と大地とともに
あれくるう時化を喚び起こす
わたしはそんな
みなも

きみを愛することのうちに
きみを憎んで呪うことも含まれ
わたしはそれをコントロールできない
きみを愛することのうちに
きみを死ぬほどあまやかしてだめにしてしまうこともあり
わたしはそれをコントロールできない

そんな波間で
わたしはそれをも愛することができてしまう

きみを愛することを
きみを愛することに対する愛がつつむ
海が満ちようが波が街を壊していこうが
さいごは
愛だ……

嘘だというだろうか?
きみは嘘だというだろうか?

きみを傷つけた百本の薔薇のとげは
わたしの心臓に生えた痛々しさ
きみを守った千年の大樹の根には
わたしが落としたなみだがとけている

きみを愛するときのわたしを
きみが「とてもやさしくて 賢くて 強く 気高い」とほめる
そうさ
きみを愛するときのわたしは無敵だもの

でも
やっぱり
きみを愛することのうちに含まれた
憎しみや馴れあいから
目をそむけてはならない

きみのやさしい頬が
わたしのやさしい額とまじる

朝目覚めたときに
きみがいてくれてよかった
きみがいない朝にも慣れているのに
きみがいる朝にも慣れてきてしまった

わたしは愛に迷い
愛にいいわけをし
愛に音をあげては
愛することを繰り返す
むやみかもしれない
無謀かもしれない
きみもまた
わたしを愛しては傷つけ
溺れ 蓋をし
されど
されど 愛することをやめない

雨が降ると
草木が満ちる
腐る根もある
崩れる土も……

わたしたちはそれである

愛することもそうだ

わたしのこゝろは
星を映すような海のみなも
暮れゆく日を沈めてゆく凪いだ日のみなも
それでいて月の満ち欠けで潮は満ち引きし
大気と大地とともに
あれくるう時化を喚び起こす
そんなみなも

きみのこころは?
きみが揺れうごくきみのこゝろを愛していますように



こゝろ
2021/11/23





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