彼女にいわれた言葉のいちいちを
傷ついてしまった言葉のさまつな逐一を
何度も思い返して舐めて味わって
深くささったナイフのきっさきを
そのかたちを確かめて
皮膚を切り裂き肉をつらぬいた
うがたれた肉のかたちを
穴を
確かめて…
確かめて…
確かめて…
確かめて…
確かめて…
確かめて……
確かめて……

泣いた

あなたが殺したわたしの数をかぞえた
楽しい作業だったわ
悲しみに暮れていればいいだけだからね
痛みに酔うのは癖になるからね
わたしはようく知っている
あなたが愛だと騙ったエゴの全て
わたしはよおく知っている
それでもエゴはあなたの無垢な愛だったと

矛盾していき螺旋につらなる真実を
うけとめる手立てのない
あんなによわよわしかったあの子を
宇宙の真綿は隠してくれなかったけれど…

あなたが愛したわたしの数をかぞえた
しかたなく
かぞえざるをえなくてね
殺されたことを覚えられるのに
愛されたことを覚えられないなんて
道理はないや
そんなに無責任なことはないや
ちょっと呆れるくらい
わたし
強くなっちゃって…
あなたがしたことをいちいちつまびらかにして
並べてかざって調べてはかり
わたしがしたことの逐一すべてを
同様に明らかにします

きれいごとは好きよ
きれいだからね
きたないことも好きよ
きたないからね
清濁という言葉は
正しいわ
まじりあうのではない
どちらも溶けあうことはなく
きちんと存在している
それが
うつくしい
ということだもの

あなたがしたことを
なんのラベルも貼らずに並べてから
ぶちまけてぐちゃぐちゃにしたら
どれが「わたしを殺した」のか
どれが「わたしを愛した」のか
わからなくなっちゃった

わたしがあなたを愛した逐一も
ラベルをはずして
わたしがあなたを殺したすべてと
無造作に放り投げたら
どれがどれだったのか
わからなくなっちゃった

泣いた

毎晩でも
泣き腫らして目覚める朝を
どうしようもなく愛しててね

愛した

それでもなお愛した

嘘ばかりだったのに
嘘さえ…

私たちはうつくしい円環にある
母と子であることを
いくつ呪っても足りないのに
結局こんなに抱きしめてしまう!

いやになるわ
愛することも
傷つけることも
愛しているんだもの

あなたが傷つけたいちいちが
エゴが
ずるい
ずるいや

愛せてしまうものなのね

人は 深いわ



人は深いね
2021/10/18





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