意味もないことに傷ついて
意味もないのだから
意義もないのだから
傷つくだけ無駄だと
いいきかせていたら
とてもらくで
そういえば昔は
そうやってやりすごして
冷たくなっていたんだなあと思いだし
いったいどうやってこんな傷むのかと
やさしく分解して
愛しく解析してやったら
すぐに答えはでずとも
ぼくはぼくを好きになれた

しらぬふりをすることが
いかに簡易かを
おれは知っている
なにせ
人から冷たいといわれて
どうしてそうなのかと
追いすがられるのにも慣れていたもの
そう
それはたやすすぎて
ここが道なき道でありながら
なんとむなしい道かと
ようやく近ごろ
気がついたのだ

おそれることをおそれるな
おそれることはよいことである
なにも
防衛本能があるから生き残れるというのではない
おそれるという感情は
うつくしい
目の前にあるものがなんであるかを
知っているわけだ
ナイフの先がこわければ
それがよく切れ
うつくしい鮮血をうみだすと知っている
あらためて検分してみると
おそろしいナイフの刃先が
とてもうつくしいことに繋がる
それでもそれがおそろしいことは変わらず
おそろしくも愛おしいと
ようやくわかる

なにが痛くて
誰にどうしたくて
ぼくはどうなりたいのか
ほんとうはいつも
知っている

逃げだした道に落としてきたものを
見つけて
いくつも見つけて
拾ってみたが
いまさら抱けず
それでも愛しくて
泣けた

落としたものたちが
土になっていたから
ぼくはこれからもずっと
もっとちゃんと
生きられる

うれしい
こんなに痛いことも
うれしい
かなしくても
うれしい
生きていたいもの
愛おしいと
もっとうれしい

ガーゼをはりながら
つめたい夜の湿り気に
やさしくねむる



ぼくは夜とガーゼ
2021/10/04





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