あなたが死んだことをまだ受け入れられない

あなたが死んでから
あなたが生きていたことそのものが
わたしの苦痛になった

あなたのにおいはだんだんと消えていく

二度と会えない
というかんたんな事実に
なぜひとは
泣いたりするのかしら
不毛だわ

もう二度と会えない
死んだあなたに対して
死んじまえって
なじった

あなたの肌のあたたかさ
知っていたけど
知っているから
わたし
それにふれられないことが
理解できないでいる

馬鹿野郎
この手で殺してやればよかった
うらんでうらんでうらみ尽くして
憎んでにくんであなたのせいにして
あなたの存在を悪にしたら
気が晴れたりするのかな

そんなわけないよね……

でも
あなたをうらんでもいいでしょう

だってもうあなたはいないんだもの

あなたの手のかたちや
胸の大きさや
そのにおいと温度を
おもいだすと
わたしはもうあなたにふれられないと知り
なぜふれられないのかがわからなくて
泣くのよ

泣くのよ
馬鹿にしないで
後生だから
なぜ先にいったの?
あなたがいなくても
わたしには友だちも家族も愛する人たちがいっぱいいるけれど
あなたのかわりはいないのよ
馬鹿なの?
あなたって馬鹿なの
意地悪
わざと死んだんでしょう
わたしを傷つけるために
ひどいわ
ひどい
ひどいよ

あなたの手のにおいが
わたしを傷つけるのよ
記憶は
映像よりも
記号や数字よりも
遺品よりも不確かなのに
あなたの手の大きさや
胸の厚さを
温度や色やにおいを
たしかに感じてしまう

もうかなしくて
生きていけない

もうかなしくて
生きていきたくないだけよ……
あなたのいない世界を



あなたが死んだことをまだ受け入れられない
2021/02/16





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