きょうたおった花をさして
水をあたえて
またいかす
いのちはつめたくてかなしい
それがすき
それがすき
そんなものがすき
あいしてやまないものたちの
死骸こそを
あいして抱く
抱きつぶすちからを
愛なんていう
愛なんていう
いのちはあたたかくてやさしい
熱くてはげしい
しずかではかなくて
しとやかに濡れているわ
なみだみたいで
雨みたいで
朝みたいで
夜みたい
星のようで
月のようで
日差しのよう
あの木漏れ日のかたち
あの足のかたち
あの肩の稜線で
あなたのひとみの色
あなたのひとみの反射のひかり
あなたの息のにおい
肌の
髪の
爪の
指の
胸の
その奥の
心臓の
……

いとしくて苦しいほど
かなわなくて届かなくて死にたければ死にたいほど
この世はこんなにもやまない
やまない
いきていることで
しんでいるわたしのどこかを
覆い隠して
育ててあげてるのよ

あなたがすき
あなたのかたちが
いのちのあらわれが
あられもない痛みや
汚さや
グロテスクで
嫌悪すべきものすべて
あなたの弱さも
愚かさも

ひとびとはいう
あなたのいかにみにくいかを
かれらはささやく
あなたのおこないの罪深さを
気持ち悪さを
おぞましさを
あなたのだめなところひとつひとつを
つまびらかにひらいてゆく

かきあつめて
キスしたら
わたしももうあなたの汚れのひとつかな?

わたしの汚れは
わたしのかたちかな



深淵
2020/09/03





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