大きなオルガン
小さな影
父の思いで
古い椅子
軋む風
夢あわい

彼を愛するうちは
生きていられた
弱すぎる人間たちは
傷つくことをおそれて
傷つけあうを選ぶから
神様は笑っている
涙を飲み干す

あのオルガンは
私の部屋に今もある
窓をあけると
あの雪のにおいが舞い込み
春の風がふきぬけていくから
私は何度も
私は何度も
あなたを思う

そう
大きなオルガン
なにも弾けない指で
撫でるだけのオルガン
好きだったから
好きだった
それだけだった
それでよかった
魔女はもういない
泣いたあとのしみも
木目に紛れていくもの
今もまだ思いだす
彼方の記憶

物語のなかに閉じ込めておきます
かなしいときには思いだす
愛が暮れる
いずれ暮れる
また朝がくるまで……



愛が暮れる
2020/07/17





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