淋しいから手にふれた
淋しいからキスをして
淋しいからセックスをした
淋しいから友達になって
淋しいから身体を埋めたくて
淋しいから愛のなんたるかを確かめようと
子どものころみたいに純粋に
必死に
懸命に
生きたわ
淋しいから嘘もついて
淋しいから
傷つく胸の深さをはかって
他人にも同じ深さを求めもしたわ

あの日みつめあった
ふたりの目は
人間くさくて
かなしくて
いやだった
いやになった
なにもかも

信じたひとに裏切られたら
生きてはいけないの?
傷ついた胸を癒すには
膨大な時間が必要だって?

そんなことないのよ
そうじゃないのよ
だって他人は一人じゃないもの
あのひと以外にもいるもの
わたしはうれしくって
ただ一刻もはやく
あなたに会いたかったっていったら
……
それも嘘にみえるかな?

許せないことをこそ
許したいとおもうのはへんかな?
傲慢かな?
強がりなのかな?
強がりな自分を認めてもいいかな?
だからやっぱり
大嫌いなひとをこそ
大好きになってもいいかな?
矛盾や葛藤をこそ
まっすぐに引き伸ばして
愛したっていいかな?

この小さな部屋に並んだ
全面を埋める本たちのなかで
取り出した一冊を開いて
泣いたり笑ったりする

あの丘の木だったときに
みつけたひとたちと
小鳥や虫の鳴き声を
いまもまだ覚えていていいかな
人間たちは
無邪気で狂おしく
私は好きだったんだもの
どうしたって好きだったんだもの
愛したって愛したって足りないくらい
愛してやまないものをこそ
憎んできりきざんで
悲しくてやりきれなくって
いかりと苛立ちのさなかに
やっぱりそれでも許したいって
許すほどの強さとやさしさがほしいって
願ってもいいよね……

もうすでに
完全無欠の人間が
私だった

ああどんなに無理したって
満身創痍の人間で
いるのが好き

大丈夫だよと
あなたがいう魔法のひとことで
あしたも健やかに目が覚めて
今日も私たちは
愛しあうんじゃない……



恋人達
2020/07/04





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