まるで張りぼてを切り抜いてできた世界みたいだ
君がせめて証拠を作っておいてくれればよかったのに
こうして文章を書いているあいだにも僕の精神は堕落へと転がり続けている
僕がオーロラを見にロシアあたりへ行って
そのあとよく効くウイスキーを散々引っ掛けて
酔っ払ったまんま凍死したとしたら
それはほとんど自殺だって指摘してくれるかい
なあちょっと最初の一行を見てくれ
なんて不恰好な比喩だと思う
でもそのくらいまいってるのさ
わかってくれよ
わかってくれるだろ君ならば
本当は君の生きた証ならいくらでもある
写真も手紙も料理だって僕は習ったから作れちまう
それなのにもう君がいないって実感だけがないんだ
実感だけがないんだ
君と一緒に買ったこの家に
君が残していったあらゆる証拠が
君との思い出が
君の存在を確かに証明してしまう
僕はとりあえず沖縄にでもいって
太陽をいっぱい浴びて
サーフィンかダイビングでもやって
楽しいことをたくさんしよう
それでもまだ生きられなかったら
ロシアにいってもいいだろう
だけど君が愛してくれた男を
ただの弱ったれのまま終わらせたくはないから
少しだけチャレンジしてみるよ
だから君は
君はそれで許してくれよ



愛する人が死んで泣く人の気持ちなんてずっと知らなかったし自分はそんな弱くないと思ってた
2020/02/01





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テーマ「人外ファンタジー」
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