あなたが雪だった頃
わたしはまだ土のなかに埋もれている
新芽だった
春になるとようやく姿をあらわし
すっかりいなくなってしまったあなたを探した

種のまま次の冬を待つこともできた
何度生まれても春にならなければ生きられず
雪が降る頃にはずっと眠っている
運命というものの巧妙さに
わたしはいかりと憎しみを覚えた

しかし何度も繰り返すことで
その完璧さに
結局は負けてしまう

この地上に
無駄なものなどなにひとつなかった
あなたに恋焦がれた日々が
いつしか懐かしい思い出になり
美しい過去はさらにただの記憶と化し
風化して脳の塵として消える
やがて様々な塵がわたしの土を作り
わたしは昔こだわったほとんどすべてを完全に忘れ
気づけばこうして
巨大な木になっていた

冬になればかならず雪が降る
それよりも今は
春にさえずる小鳥たちや
夏にせわしい蝉の群れ
秋の落ち葉を集める人間たちが好きで
彼らと話ができたらどんなによいかと思う

だから来世は
私はかならず人になる
もうみえる
緑や動物たちとふれあい
人のなかで泣き笑いするわたしが
そしてきっと
豊で偉大な一本の木のもとで
この木のように生きたいと願うのだろう

なんておかしい

なんと完璧な人生なのだろう



わたしが木だった頃
2020/01/16





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