神様はじっと君をみていた

だって春はもうこないから

神様はじっと君をみていた

夏に蝉は死ぬから

神様はじっと君をみていた

朝になれば夜のことは忘れるから

神様はじっと君をみていた

夢も現実の一部だから

神様はじっと君をみていた

秋の落ち葉を集めて火を焚いたから

神様はじっと君をみていた

からすの鳴き声が空にさみしくこだまするから

神様はじっと君をみていた

冬は永遠に終わらないから

神様はじっと君をみていた

雪が溶ける前にすべてが朽ちていくから

神様はじっと君をみていた

春が訪れても冬のあいだに世界は一度朽ちているから

神様はじっと君をみていた

神様はずっと君をみていた

僕たちは神様を見上げていた

助ける力などないから

君の手を引くのは君自身だから

僕の手を引くのは僕しかいないから

神様はずっと僕らをみていた

無力さに溺れて傷むのは弱いからではないから

神様はただじっとみつめていた

もう春はこないと決めつけて嘆くことは簡単だったから

僕は息を吸いに上へあがるのすら億劫になって
ずっと溺れて傷み続けていつか腐ってくれるのを待っていた

神様はずっとみていた

ようやく息継ぎをしに顔をあげると
新しい空気とともに
涙があふれた

ずっと泣きたかっただけだ

神様はずっとみていた

泣くことも笑うこともないから

神様はずっとみていた

君を感じていたから

君が泣くたび涙の熱さを感じ
僕がいかるたび胸の拍動を感じ
僕らが生きるほど生きることを感じていた

そのためにみていた

嘘をついてごめん

本当はとても強かったのに
弱いふりをしてきた

ずっとありがとう

本当はすごく意気地なしだったのに
強気なふりをしていた

これからもごめんね
だけどたぶんこの先も永遠にありがとう

神様はずっとみている

だって春はもうこないから

僕らがいくんだ



神様はきみをみている
2019/12/24





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