なにもわからない混迷のなか
ただひとつわたしがみつけた
わたしはいつかかならず悔やむだろう
そんな確信を
素晴らしい偉人のことばのように抱いて
愛することが
世界

だった

春は
あのオルガンの鳴る
夏の日差しと
潮のにおい
永遠に続く子どもたちが
空は青いと知っている
くたびれた椅子
真冬の春を
えがいた壁の……

そう
傷みきっていたはずの果実が
なぜか巻き戻される時間かのように
うつくしくみずみずしく
吹き返したが



わたし、
ああ
おまえはいつかかならず悔やむだろう
それを知ってなおその道を歩き続けた
ことすら悔やみ
またいつかかならず悔やむ
を抱いて
歩いてきたことの
尊さ……

だった

春を抱いたのだった
いつも
いつも
知らぬまに



春を抱いたのだった
2019/11/03





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