わたしが重ねたうえに
見知らぬだれかが重ね
知らぬまに積み上がった積み木の塔
わたしはわたしだけでやりたかったって
赤ちゃんみたいによく泣いたんだね
自分ばかり押しつけたくって
あなたの積み木を一個ずつ落としていった
だれかの積み木を取り上げていった
はずみで自分の積み木が落ちたら
また泣いて、怒って、地団駄を踏んで
赤ちゃんみたいな顔で
ぐちゃぐちゃのきたない顔で
全部崩してきた よ

あなたの手は大きかった
わたしも大きくなったけど
あなたの手は今もまだもっと大きい
わたしとは違って骨ばっていて
指も長くて
煙草のにおいが染みついていた

積み木を
少し目を離しても積み上がっていく積み木を
見つめて泣けた
泣けた
あなたを憎んでいた時代ですら
愛の一部だった……
ぐらぐらと揺れる積み木が
どれだけ高くなっても
あるいは簡単に崩れ落ちてしまっても
間違いなくわたしたちだった

積み木を
積み木を崩してごめんね
わたしが崩した積み木が
あなたの積み木にも重なって
崩れた
あなたはそれを戸惑いながら見つめ
あなたもまた怒りや後悔や悲しみに混ぜられながら
疲れた手で積み直し続けた
わたしは自分のものしか見ていなかったから
そしてその積み木すらひとごとのように
もう二度と積み上がるなと潰していったから
あなたのこころは
どんなかたちになってしまったのだろう

積み木はもう
積み上げるのはやめたんだけど
きれいに並べ直してもいないけど
場所が広くなったので
躓くこともなくなった
あなたを恨むこともなくなった
わたしのことも
積み木を眺めて
ひとりで傷つくこともなくなった

もしもわたしとあなたのあいだに法律があって
どちらかがどちらかを裁けるのならば
わたしはあなたに裁かれてしまうだろう
けれどもそんなものがない今
わたしはわたしのしてきたことを
まっさらにしてしまって
なぜか愛しくかけがえなく感じている
無秩序に積み上げられたままの
あの積み木たちも

家を
家を建てる
好きな部屋を選んで
庭を作るから
好きなものを育てて
仕事から帰ると
あなたがいる
玄関のいすに腰かけている
日差しが肩やうなじを焼いて
少し遠くからわたしは手を振るわ

涙も出ない
泣けるほど愛おしいから
涙も出ない
幸せ



untitled
2019/07/08





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