ちいさな雨のひと粒が
音もなく落ちた土に
偶然種が重なり
やがて芽吹き
大地へと根を生やし
緑の茎をゆっくりとのばし
だれよりもなによりも
永遠に近い速度で
空間をはしごのように
つたっていく
わたしはそれを見つめる
かすかな森の木漏れ日になりたい
あなたをほんのすこし生かす
ちいさなゆらぎ
目に見えないほどの
感じることが難しいほどの
ささやかな奇跡
わたしが生きた季節と
あなたが生きた季節は
たとえ時代が違っても
重なっているという
奇跡

やがて種は
大木になり
人に伐り倒されても
土は覚えている
木漏れ日が失せても
太陽は減らない
永遠に近い速度は
そのままに



永遠に近い速度
2019/05/07





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テーマ「人外ファンタジー」
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