あなたが死んで気づいた
生き物はみんな死ぬのに
どうしてまわりの人は
誰かが死ぬと泣くんだろうって
ずっと不思議だった

あなたが死んで気づいた
あなたが死んだとき
棺のなかで別人のように眠るあなたを見て
わたしは泣いた
なにかに急かされるわけでもなく
こころを搾られるわけでもなく
ただ泉が自然とわき出るように
涙が
傷口からぷつりとあふれる血液のように
あふれてこぼれた

あなたが死んで気づいた
あなたが死んで
もう二度と会えないために
わたしは泣いたのではなかった
あなたがこれまで生きていたことに
驚いて泣いたのだ
あなたがこれまで生きて
わたしとともに笑ったりしていたことに
わたしにふれたり一緒に空を見上げたりしていたことに
泣いたのだ

わたしは驚いた
あなたは生きていた
わたしの隣で
さようならという前に死んだあなたに
わたしは会いたくて泣いたんじゃない
あなたがこれまで生きていてくれたことが
嬉しくて泣いたのだ

これからはあなたなしで生きていくが
厳密にはあなたなしではないということも
気づいた

あなたが死んで気づいた

あなたは空気のなかにもいて
風や雨であり
土のかおりであり
音であり色であり
夏の日差しのかけらであり
秋の木枯らしとともに窓を叩き
冬の灰色の景色のなかにもひそみ
春の新緑のひとしずくだった

あなたが死んで気づいた
この人がいなければ
世界は崩壊したも同然で
わたしの幸福は一瞬で灰となり
喜びや楽しみは偽物になり
きっとわたしは途方に暮れ
親をなくした頃のように
永遠にひとりうつろに生きるのだろう
死にながら生きるのだろう

そう思わせた人が死んだというのに
わたしは生きている

わたしは生きている

あなたが死んで気づいた
わたしはこころからあなたを愛していて
あなたがいなくても
ひとりでも生きてゆけるほどに
あなたを愛していたことに

そしてもうどれほど願っても
孤独にはなれないことに
あなたが死んで気づいた



あなたが死んで気づいた
2019/04/16





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