母は病み
父は絶え
祖母は盲い
祖父は黙し
この家は小さな檻のよう
姉も兄も知らぬふり
死のうか死のうか
生きようか
みながみな憂鬱に伏せてまで
なにを見るなにを見る
さあもうよかろう朝がきて
もう枯れた手指で鎖を編むな
わたしはひとり羽搏いた
もがれた羽は音だけ残し
檻の外には地面がなかった
死ぬときは
なにも見えなかった



2019/03/30





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