おそれるたびに
おそれることはなにもないと
あなたの望むようにいえる
不安の火をけせるのはあなただけだが
不安の火がきえるまで
そばにいよう

永遠に終わらないものごとをこわいといいながら
一瞬の愛では愛を感じられないと
あなたは泣く
失うことをおそれ
失うことを予期して
なにかを掴み取ることを放棄する
あなたのなかにあいた穴を
あなたは眺めてはため息をついて
涙を落とす
底のない穴に落ちていく涙は尽きることもなく
音も立てず消えていく
それをあなたは孤独とか
虚しさと呼ぶ

わたしを見てほしい
わたしは裕福ではないし
賢くもない
美しい容姿でもなければ
恋人もいない
家族との縁もうすく
友人はほんの少しだ
絵をかく才能などもなかったし
特別なちからなどは
いっさい持っていない
わたしが持っているのは
わたしを信じるちからだけだ
わたしも何度もおそれた
立ち止まり逃げ出してきた
けれどもそれももうやめた
わたしはもう
わたしになんのちからもなくとも
たとえだれに愛されることもなくとも
わたしは十分にやっていけると
知ってしまったから
人が一日で成すことを
わたしは一年かけてもできず
それでも百年かけて成そう
わたしは知っている
ずっとなにもかも足りないと思っていた
ずっと胸にあいた穴を眺めては
あなたのように涙を落として
底のない闇にこころを奪われていた
その穴を
いまは風がふきぬける
強い夏の日差しも
秋の木の葉のささめきも
冬の冷たい雨も
春の緑の息吹きも
その穴を通り抜けて
わたしを貫いていくのだ!
そうだった
この穴をどうするのかは
わたしが決められたのだ
その穴に涙を落とすのは
あなたがそれを選んだからだ
あなたが笑いたいなら
泣くのをやめるまで
わたしが見ていよう
一人でやめられないというのなら
わたしが涙が落ちないように拾ってやろう
この胸が濡れても
このからだが崩れ去っても
こわくなどなかった

さあ今夜も好きな映画をみよう
好きな酒を飲もう
なにをしてもいい
あなたの好きなことを
あなたの望むことをしよう
不毛なことなどない
無為に過ぎていく日々をこそ
愛していればいい

わたしたちは死なない



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2019/03/03





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