この夜を輪切りにして重さを測ってみると
測れるほどの質量がなく
その途方もなさにわたしはいつも
針路を見失う

何度君を呼んだか
仄暗い部屋のなかでわざと明かりをつけず
床に額をこすりつけて泣いたことか
自分のすべての細胞に謝った
謝り尽くした
だれかに許してほしくて
そのだれかは確かにわたしではなかったけれど
わたしを許せるのは残念ながら
わたし以外にはいないのだということを
受け入れきれずに

この朝のひと粒ひと粒を指でつみとり
どれくらいあるのか数えてみる
日の光が眠らぬまぶたをさすたび
世界を呪った
親を呪った
この人生を
光というものの壮大さについていけず
なすすべもなく身を起こすだけの朝を
繰り返し繰り返し続け
ああようやくいまは
ようやくいまは
日の光はわたしをとおりぬけ
わたしもまた日の光をすりぬけて
日の光とともに世界中を旅するのだ

何度も呼んだ君のことを
世界にたとえて
むしろ世界が君のたとえであることを気づいたときには
感激して
もうどんなふうにでも生きてゆけるはずだと
強く思ったものだ

わたしが愛しているといおうがいうまいが
わたしの愛には変わりはないことを
君は最初から
わたしがうまれるよりずっと前から
君がうまれるより前から
君は最初から
最初よりその前から
ずっと知っていた……

わたしの小鳥を聞いてください
ここにあるかすかな羽撃きの音が
わたしのすべてなんです



朝と夜を飛んでゆく小鳥
2019/01/28





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