あなたの胸が
ちいさく動いているから
その音が
世界の調べでしょ

なにもないところで
だれかに与えられた価値観で生きてきたからこそ
自分自身の価値観をつくりだすことができた
だから本当にこわいものや
本当に困ったことなんか
この世にないって知ったわ

あなたが知らなかったことを
大きくなったあなたが知って
ほかの人たちとは全然違うことを
あなたは知って
そうやって感じたあなたを
あなたが守るの
生かすの
生きるの
あなたが法で裁かれる犯罪者でも
あなたにはあなたの生がある

私たちはなにかにおそれながらゆくの
そしておそれないことを知り得るの
すべてを知ることの前に
なにも知らなかったことを知るの
私たちは子どもとして生き
子どもだったことを知ると大人になり
大人になった自分を見て
子どもにもなれることを知る
年老いた頃には
子どもであり大人でありそれ以外であるでしょう
あなたの胸はいまもかわらず
ちいさく羽撃いているわ

その胸に頬を寄せる……
その音が眠りに導く
すべてがある場所から
なにもない場所へ戻ろう
やがてまた目覚めると
私たちはすべてがある場所へ旅するだろう
そうやって順繰りに繰り返していく
旅すること以外には
生き方などない
私の胸のなかの愛しい小鳥よ



小鳥
2019/01/28





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