おそれる必要などなかった
それでもおそれてしまう
恥じらう必要などなかった
それでも恥じらってしまう
戸惑う必要などなかった
それでも戸惑ってしまう
そうやって必要のないことをして生きてきた
けれどもそれもまた抗いようもなく
大切なことすべてだった
おそれることで
おそれないことを知りえた
恥じらうことで
恥じらわぬこころを手に入れた
戸惑うことで
戸惑わずただ立ち向かう強さを

わたしはわたしを見逃したりしない
わたしはとても幼かった
愚かだった
弱かった
そうさとってしまったとき
このまま生きてなどいけないと思ったが
幼くも賢くあり
愚かにも穿つ目を持ち
弱くとも起き上がり続け
わたしはわたしをまた
強く賢く立派になったと
認められた
だからもう
あとはこんなにも簡単で……

だからわたしは
あなたにケーキを焼く
かわいい絵本を読み
楽しい映画やこわい映画をみて
泣いては笑おう

難しいことや
高等なことも
困難なことも
抜き差しならぬことも
必要ない

たとえば賢さや強さや勇気ですら
なくてもよいのだ
なぜならそれでも結局
あなたはあなたで
わたしはわたしになるしかないから

それでもおそれてしまう小さな動物を
愛そう
それでも恥じらってしまう愚かな子どもを
愛そう
それでも戸惑ってしまう立ち止まる大人たちを
愛そう

大人でも子どもでも
勇気でも弱虫でも
欺瞞でも幸福でもない
わたしたち



わたしたち
2019/01/24





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