どうしてかわからないけれど
僕にはない力強さを持っている君が
生きているだけで怖かった
生きているだけで怖かった
ただ君が
君が生きているだけで

君の素晴らしさに心動かされ
どこまでも君についていこうと思ったのに
なぜ君を殺してしまったのだろう

僕は包丁を持って眠ったんだ
枕の下に隠して
なぜかはわからないけれど
そうすることで夜を越えられたから

ああ振り翳すとき
振り翳すとき
なにを見ただろう
なにが見えただろう

君はどんな顔をしていた?
覚えていない
覚えていない

僕は見なかったのだ
君を見なかった
見なかったからだ
覚えていない
覚えていない

僕のなかの淀んだところに
毎晩
毎晩
毎朝
毎朝
涙を垂らしたんだ
誰かに見せることはできなかったから
そうやって隠したんだ
僕は僕の汚れを愛していたけれど
自信も勇気もなかったんだ
淀みのそばがなぜ落ち着くのか気づいたころには
飛びたいと願わなくても
空を飛べたよ

君は覚えているだろか
僕を覚えているだろか
僕をも一度見つけてくれるだろか
ここで泣いていてもいいといってくれ
いってくれ
泣きたくない
泣きたくない
もう泣きたくない
どれだけ泣いても足りない
どんどん足されていく悲しみやおそれを
君に押しつけたかったのだろか
僕は……
僕は……

君が笑うよ
君が笑うのさ
日差しのなか
日差しのなか

君は笑うよ
振り向きざまに
完璧な顔だ
僕は拝みたかったんだ
そうすることでしか
愛することを表現できなかった
ただ笑い返せば
僕がそこにいれば
すでに愛だったのに

ああ愛すれば愛するほど怖いのはなぜだ
ああ愛すれば愛するほど遠のいていくことを受け入れられない
ああ愛すれば愛するほど満たされていくことを
満たされていくことを受け入れられない!

君は知っていた
孤独な人々はみな
満たされることをおそれている

愛してくれてありがとう
愛の表現などいらないと
その身で示してくれてありがとう

最後にキスをすればよかった

涙を垂らした淀みが
乾くことも浄化されることもなく
いつまでもそこにそのままでありつづけ
いつかその隣に
美しい花が咲きますように

だって雨はいつも
いつも泣けるほど透きとおって美しかったから



隣人
2019/01/14





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