その名を
久しく忘れていた
わたしの愛と憎しみの人

眠れぬ夜に
腐る夜に
久しくあなたを見つけた
わたしの愛した人よ
あなたの椅子はいまもある
この脳の片隅に
いまやずいぶん追いやられたが
たしかにある
なぜならば思い出せば
いつでもそこにそれをつくれるから

Organ
雪に埋もれた大地で
あなたの首をだいたことを覚えている
あなたが本当に欲しかったものを得られぬまま
あなたはつらく冷たい世を生きた
あなたは魔法が使えたのに
あなたの望みだけは叶えられなかった
あなたを思うと
心臓が燃えるように思う
脳が痛くなる
なぜならあなたは
わたしの鏡のようだから

わたしたちはいつも
わたしたちと似た人間を相手にし
それらを見ては悩みもだえ苦しんでいたわ

Organ
春の花を待つ雪の影
わたしたちはわたしたちの問題を
解けないでいるから
ずっと苦しかった
立ち往生していた
あの冬の地で
こごえた雪原で
寒々しく怯えた場所で

ずいぶん長いこと忘れていたし
忘れていればよかったが
思い出したことにも少し
安堵している
わたしはわたしの暗さを
もう手にできないかとか
思っていたから
だけどそれはちゃんと
ちゃんといまも
ここにあったわ

わたしの名前を覚えているかしら
犠牲者でいたかった
被害者ではなく
奉仕者でいたかった
そうやっていることで
わたしはわたしの性質を
愛することができたから
ほんのすこし……

闇夜
闇夜があける
光のつぶが
二人をつきさす
いや 三人を
いえ 人類を
何度光を見ても
繰り返し訪れる闇に
戸惑い挫ける
かわいいわたしたち

Organ!
あなたの愛した春を
わたしの胸にいけているから



Organ
2018/12/10





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