一番なんてものはこの世にないってわかったの
すべてのものに優先順位をつけられると思っていた
自信があった
私は冷静で合理的な考えができると
もちろんできるけれど
優先順位もつけられるけれど
それをする意味がないことに気がついたの
どれだけあなたを愛しても
心の底から愛しても
愛しても
愛しても……
あなたのかわりにすべてを犠牲にしてもいい
そんな道理がないことに気づいた
愛が足りないのではない
人類のなかで
一番愛している人はあなただと思ったけれど
生きていくたびに違うかもしれないと思う
それはあなたへの愛がうすまっていくのではなく
あなたを愛するほどに
まわりの誰かのことをも
愛しく思えるようになるからよ

この世のすべてのなかで
私ですら一番ではなかった
私は私のために誰かを犠牲にはしないし
誰かのために私やほかの誰かを犠牲にはしない
ひとつだけいえるのならば
多数決は選ばないし
人に求められない話し合いもしない

あるがまま流れていくだけよ
心の赴くままに生きていくことなどできないと思ってきた
心の赴くままに生きている人などこの世にはいないと思っていた
振りだけならいくらでもできると
私は心の赴くまま生きていけることを知った
あなたを愛して愛して愛し尽くし
行き場のないものがうずたかく積もった自意識の箱のなかで
自分自身という
ひかる手のひらが見えた
差し出されたそれを取ってしまえば
簡単に視界が開けた

大切なものは一つあればよかった
ものではなく心だった
それが一番ではなく
優先順位でもないものだとわかったから
私はもうどれだけ怖くても
一人きりだと思っても
苦しくても
簡単に生きていける

一番に愛している
なにを犠牲にしても尽くし続ける
この身がすりきれようとも

そう思っていたかった
ずっと
ずっと夢みていた

だけどそれは私ではなかった
私の大切なものは
それではなかった

まるで台風の目のなかにいるように
まわりは忙しなく生きていく
私は戸惑いすら隠さず
弱さに負けそうになることを誇りに思って
生きていく

けれども一つだけあなたに関する特別なことがある
それはあなたは確かに一番ではないけれど
なににも揺るがぬ特別であるということ



こころのまんなか
2018/10/29





×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -