たった一人のひとを愛する夢をみてた
いつも夢ばかりみてた
夢のなかでも夢をみてた
春を愛する夢をみていた
……

行くあてもないくせに
歩き出してばかりいる
何度も方向転換して
あてなどないのに
遠くにばかり行こうとする
ただ
同じ場所にいるのがこわくて
変わり続けなければ
生きていられない
弱い人間だ

季節は移り変わり
二度と同じ空も雲もないけれども
季節が移り変わることと
空や雲が二度と同じ色やかたちであることがないことは
永遠に変わらないらしい

あの夏は二度とこない
だからこの夏も
母のいた夏も
友だちのいた夏も
同じ夏は二度とないけれど
夏は永遠にめぐってくる
らしい……

せめていま
少し声を押し殺し
なみだすら押し殺し
感じていよう
感じていよう

不毛なすべてを
意味のないすべてを
難しいことすべて
かんたんなことすべて
わたしのすべて

永遠はあるらしい
けれども永遠に
行くあてがない旅は
ないらしい
ああ

わたしは



歩き続ける人

2018/09/24

← →