わたしになにが遺せるのだろう
あなたのようにうたいたい
わたしもうたいたい
わたしの悲しみを遺したい
この世にはなにもないことを
そしてなにもかもがあることを
わたしも遺したい
わたしのこころを遺したい
悲しみも痛みも苦しみも
ひかりかがやくなにもかもを

ああときどき思う
わたしはひとりうまれ
ひとり生きていくために
うまれたのだ
何度も出会い繋がり離れながら
それでもひとりで生きていくことを選ぶため
わたしはうまれてきたのだ
それは孤独ということでなく
大勢とともに
大勢の人のなかで
ひとりで見る景色のいとおしさを
素直にいつくしむために
わたしはうまれてきたのだ

だれかを愛すだろう
なにかを愛すだろう
ひとときでも永遠に近い時間でも
愛するものと見る夕べに見えぬものが
わたしのなかにあることに
気づいてしまっただろう
愛するものと見る夕べにしか見えぬものを
わたしは選ばないのかもしれない

孤独ではないひとりの人たちが
多く多くいることだろう

わたしはふと気づく
ある瞬間に
何度も何度も忘れては
また気づく
歩いていると
日差しを浴びてゆらぐ木立ちのなかに
そうだ
わたしはこの瞬間のために
生きているのだと

おおなんと不毛で
生きる価値のあるこの人生
なんと不毛で
こんなにも不毛で
おかしな
生きる価値のある
わたしの世



one
2018/09/24





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