この関係を続けるべきか否か、社会的に見れば一目瞭然でも、個人的な思考や私情を挟んでしまえばそれが善か悪かはまったく別物になることだ。

『…なにしてるの?アーサー』
「………あ?なんだnameか」

 傘を片手に、または雨避けの上着を頭までかぶって早足に道を往来する人のなかでは目の前にいるこの人はかなり浮いている。まあこの土砂降りの中ならばそんな人に目もくれる暇もないのだろうが。傍らを通る人は皆、早足に濡れた道の水たまりを跳ねさせていく。

『政府のお偉いさんが"あ?"なんて言わないでよ柄悪いな』
「うるせえほっとけ」

 こわい。この土砂降りの中で傘も差さずにスーツの色を雨で変えて、お酒の匂いを漂わせている姿はかなり異質だ。且つこの形相、目つきは明らかに一般人には見えない。あれか、実は裏稼業でマフィアやってます的なあれか。そうとしか思えないぞその睨み方。

『酔ってるね、我らが祖国様ともあろう御方がどれだけ飲んだのかなー』
「うるせー俺だって酔いたいときぐらいある」

 俯いて両手で顔を覆う姿は自分よりも大きく、見た目よりも逞しい身体を知っている私の目にはとても珍しいものに映った。何かあったのかなーこの拗ね方と酔い方は見たことない。

『私の家、来る?』
「…彼氏は?」
『うーん、潮時かなー。もう三ヶ月は連絡来てないし』
「つまり?」
『心配しなくていいよ、来るわけないから』

 ふらつきながら立ちあがった彼を支えつつ、私も雨に打たれながら家への帰路を急いだ。



***



『ね、ちょっとアーサー』
「ッ、うるせえ黙ってろ」
『ちが、いくらなんでもがっつき過ぎだって、あッ』

 首筋の、襟の細いシャツからぎりぎり見えるか見えないかのところに吸いつかれ、ぞわりと寒気にも似た快楽が身体中に広がった。早々に脱いで、脱がされた為にお互いに服は着ていない。そのおかげで雨で冷えた身体も肌が擦れ、触れるたびに熱が高まっていった。肌に感じる熱も、彼の唇も心地いい。しかし。

『いっ、ちょ、痛い!痛っ…!!』
「あ、わ、悪い」

 いつもの彼らしくもなく、彼を受け入れているそこは充分に解されてはいなかった。それ以上に、あまりに性急な動きによって痛みを感じる程だ。
 動きを止め、身を案じるように私の頬を擦る彼と同じように私も彼の頬に触れる。頬に当てられた手を愛おし気に撫で、頬ずりをする姿は猫の動きに似ている。

「動いても、いいか」
『ゆっくりね、まだ痛いんだから、ってうわっ』

 腰を掴まれたと思ったとたん、私の身体は彼の上に乗っていて彼の顔を見降ろしていた。アーサーが後ろに倒れ、nameの身体をそのまま上に乗せるような形になったことに気付いた。カーテンの隙間から漏れる月明かりに照らされる彼の顔を見下ろすことになったこの現状を理解できぬまま、薄い胸板を撫でる。見た目にはわかりにくいが触れてみると筋肉がしっかりついて筋張っている胸板から腹筋まで指をすべらせる。

「くすぐってぇよ」
『どうしたの、騎乗位なんてしたことなかったじゃない』
「今の俺じゃ手加減できそうにないんだ。自分で動いてくれないか」
『えー…』

 えーとはなんだ。そう言葉をもらしつつ半身を少しだけ起こしたアーサーにnameが唇を合わせる。触れるだけのキスに瞳を瞬かせるアーサーを半身を押して再びシーツに伏させる。

『じゃあ私の動きが悪くても手、出さないでね』
「うーん約束はできんな」








なんだろう。ものすごい雨に降られたときに見事に傘を忘れた私が濡れ鼠になったときに浮かんだものなんですが。なんだろう。何を書きたかったのかよくわからなくなってしまいました。とりあえず雨にぬれる紳士は水も滴るいい男だろうという。ちょっとどころではなくへこんでたらまあ身体で慰めてもらおう的なあれを書きたかったんですが思い通りにならなかった。不倫または浮気とはいっても夢主のお相手はほぼいないも同然のようものなのであまり浮気とか不倫とは言えませんね。




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