「デートしようよ!」
『へ、え、ちょっと待って私部屋着のままなんだけどってちょちょちょっと!!』

 休日にも関わらず広い液晶画面に淀みきった目を向けていると唐突に腕を引っ張られた。突然押しかけてきたアルフレッドは私のゲームに指を駆使していたかと思えばそれを放って本棚から漫画を取り出しては流し読みを繰り返して時間を過ごしていた。
 そんな彼がそんなことを言って私の腕を掴んで駆けださんばかりの勢いで玄関に突進していくのだから驚きもする。さすがにノーメイクに部屋着にぐしゃぐしゃの頭では出るに出られない。犬に待てをするかのような気分でアルフレッドを廊下に待たせて身支度を整えた。データをしっかり保存して確認をしてから電源を落とす。鏡の前で服装をチェックしてからブーツに足を突っ込み廊下にいるアルフレッドの髪を犬にでもするかのように撫でた。

『で?デートってどこに行くつもり?』
「んーどうしようか、考えてなかったよ」
『嘘でしょ…こんなことならPC持ってくるんだった…』

 ノープランなら外でウィンドウのみのショッピングをしてふらっと街を歩きどことなくカフェに入っておしゃべりをするだろうから作業する時間はあったではないか。コートについたファーに顔を埋めつつ不満を漏らすnameにアルフレッドも不満の声を上げた。

「今はデート中なんだぞ、恋人を放っておいて君はデータとよろしくするつもりなのかい?」

 むッときた。しかしそういう言われ方をしても仕方がない気もしてきた。もうしばらくデートをしていない。互いの家にもあまり行き来していない。連絡もなおざり。その状況が暫く続いてからの今のアルフレッドのこの行動は正直有難いものだったのだ。不満を言う前に私は反省をしなければならない。

『ごめん』
「いいさ、俺だって急に押しかけていったんだし」
『でも、暫く連絡もしなかったし顔も合わせてなかったのは私のせいだし』
「だからこうして俺がnameを誘ったんだしもういいじゃないか!」
『で、も…さっきの私の言い方は、やっぱりよくなかったから。ごめ』

 ごめんと言い切る前に突如として大声を張り上げるアルフレッドに言葉を切らざるを得なかった。肩を揺らして驚きに目を瞬かせていると、声をぴたっととめて、いたずらっ子の笑みを浮かべた顔が目に映る。

「ヒーローである俺がいいって言ってるんだからもういいんだぞ!!それより!!!」

 手を力強く掴むのとその場から駆けだすタイミングはほぼ同時だったと思う。アルフレッドは私の手を握りしめるとアスファルトの地にカラフルなブランドもののスニーカーを叩きつけて先程いた地点からどんどん距離をつけていく。手を引かれるままに私も走るが日頃の運動不足に目の前の背中のスピードが非ではないためにすでに息切れしかけている。

「俺とenjoyしようじゃないか!ヒーローである俺は君を退屈になんてさせないんだぞー!!」







アルフレッドちゃんが突然デートに誘ってくれたら楽しかろうな〜とぼんやり考えていたらこういったものが浮かびました。アルフレッドが日本にいたらラウワンで一日を費やすこともあるのだろうなぁと想像したらとても楽しいです。




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