二人と別れてからカラーレスは堀の上に戻り、あることを考えていた。


(…今日はメアリーさん、居なかったナァ)


それはいつもダイヤとロウと一緒にいるメアリーの事だった。


(私の記憶ガ戻ってからメアリーさんに対して気になる点が一つある)


ふうと溜め息を一つ。


「(まあ急ぐ事ではないですし、また今度にしましょうカ…)で、今日はどういったご用でショウ?」


顔は前に向いたまま、しかし視線だけを後ろへと動かす。
近く森の茂み、そこからバッと影が数人分出てきた。


「…よく気づいたね」

「わざとらしいですネ。気配を敢えて隠していなかったのでショウ?」


カラーレスの視線の先にいるのは耳に2、3、6、7のイヤリングを付け軍服に身を包む人物達。


「ごきげんよウ。トランプ兵団幹部の皆サン」


堀に座りながら、だが身体の向きはその人物達の方に向き直してカラーレスはニコリと笑って見せた。

それに2のイヤリングを付けた男ツーもニコリと笑い返す。


「こんにちは。体調は良さそうだね」

「お陰様デ。もう暫く頭痛は勘弁したいデスガ。で、ご用件ハ?」

「ああそれは」

「ふぇええ。ツー君ハンプティさん怒ってるますぅ、絶体怒ってますよぉおお」

「フッ。ああ言う男はああして内心を悟られないようにしているのさ。ミステリアスにしてな。まあ?ミステリアスイケメンは俺だけどな!」

「ツー、ダルいから帰って良い?」

「シックス大丈夫だよハンプティさんは怒っていないから。スリー適当な事言わない。職務中に鏡を見ない。セブンもう少し頑張ろう?」

「………。貴方も大変デスネ」



めそめそと泣き始めたシックスにドヤ顔をするスリー。あくびを噛み締めるセブン。

手慣れたように一人一人に突っ込みを入れたツーにカラーレスは何とも言えない気持ちになった。

ツーはトランプ兵団幹部メンバーのオカンとも言われるほど面倒見が良いらしい。
噂で聞いたぐらいだが、その通りなのだろう。

下を見ながら考えているとまた森から数人の影が転がり出てきた。


「ツゥウウウ!!!」

「なっ?!エース!?キミなんでここにグフォッ!!」


ツーが全て言い終わらない内に城に居たはずのトランプ兵団副隊長のエースが背後から激突してくる。

勿論ツーは吹っ飛ばされ、それをカラーレスや他トランプ兵達も見ることになる。


「まったく探したぞ!ん、ツーどうした?」


ぶつかった張本人のエースはピンピンしているようでツーは笑顔のまま立ち上がる。


「…エース。少し話そうか?」


その口調には怒りが込められていた。

暫し暗転。


***


「ダメだ、足が、もう痺れて…!」

「足を崩さない」


堀の付近は昔の名残で石畳が多い。

お仕置きとばかりにその石畳の上で正座をさせられるエースに顔は笑いながらだが明らかに怒っているツーは無情に言い切った。

流石のエースも項垂れる。


「何で居残り組もこっち来てるのさ?」


ツーがエースの右隣で同じ様に正座をしている数人に視線を移すと彼等、居残り組の幹部達。


「いや〜城に居ても暇だし?こっちの方が楽しそうだし?」

「オレは嫌って行ったんだ…それなのにコイツらが…。外に出るとろくなことが無いんだ…」


頭をかきながら悪びれなく楽しそうに話すフォー。
ボソボソと話し時おり重たい溜め息を吐くファイブ。


「アタイ、正座飽きちゃいました!」

「僕、も、足、痺れてきた」

「ああああ!僕何でついてきちゃったんだろ!?」


今すぐにでも動き回りたいのかうずうずしているエイトに頷くナイン。
後悔して青ざめながら絶叫するのはテンだ。


「…あたしとしたことが皆を止めれなかった。すまない」


正座をしているメンバーと違い、ツーの隣に並んで立っているジョーカーは申し訳なさそうにした。


「良いんだよジョーカー。いつもジョーカーが全員のブレーキ役に徹してくれてるのは知っているから。ったく…これじゃあ幹部全員集合じゃないか。隊長から大目玉食らいそうだな」

「ツー?そろそろ正座やめても、」

「エースまだまだダメだよ」


はい…とまた項垂れたエースにこの人本当にトランプ兵団の副隊長か?と思ってしまった。


「あノ…私どうしたらいいのデスカ…?」


下でワイワイガヤガヤと盛り上がっている騒ぎを見ながらカラーレスは恐る恐るといった表情で声を発した。

蚊帳の外に居るのが居たたまれなくなったらしい。


「あ、すみません。今日来たのはハンプティさんを数日後に城で行われるパーティーにお呼びする為に来たんだ」


エース達のお仕置き正座をジョーカーやシックス達に見張りを任せ、ツーは当初の目的を思い出しカラーレスを見上げて伝える。


「パーティーですカ?私なんかガ行っても良いのですカ?」

「もちろん。エミリア女王は原色メンバーも呼ぶつもりらしいから帽子屋達も来るよ」

「そうですカ…!」


嬉しそうな顔をするカラーレスにツーはキョトンとするが、すぐにまた微笑んだ。
本当に変わったんだなと思っていると後ろから叫び声が聞こえてくる。

エースの声だ。
痺れを切らしたのだろう。

流石にこれ以上騒ぐと迷惑になるだろうと思い撤収しようとするとカラーレスから


「クスクス、幹部の方々はとても賑やかですネ」

「そうかな?まとめるのは苦労するよ」

「それもそうですガ。家族みたいで楽しそうデス」

「…家族って言うのは合ってるね。僕ら幹部メンバーは孤児院出身でね、小さいときから一緒だった」


身寄りのない自分達を救ってくれたのはあの人だった。


「タクト隊長に鍛えられて今の地位にまで上り詰めたんだ。感謝してる。凄く。皆もそうだ。………まあ、普段は一部を除く奴等はバカばっかりしてるけどね」


良い話で終わるかと思いきや最後の最後で毒を吐き出したツーは皆の所へと歩いて行った。

…今日は彼の黒い部分を垣間見た様な気がした。

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